新型コロナウイルスの感染拡大で「オーバーシュート」や「アウトブレイク」「パンデミック」など、普段はあまり聞き慣れないカタカナ用語が飛び交っています。意味がよくわからず困っているという方も多いのではないでしょうか。
ウイルスに関する重要な内容を正しく理解できなければ、不要なトラブルに繋がる可能性もあるので注意が必要です。そこで今回は、最近頻出しているカタカナ用語について詳しく解説していきます。
オーバーシュートの意味
「行き過ぎる」「度を越す」などの意味がある「オーバーシュート」は、有価証券価格の「行き過ぎた変動」を指す金融証券用語として主に使われています。
しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るう現状では、「予測以上の爆発的な感染拡大」を意味する言葉としても用いられるようになりました。オーバーシュートは感染爆発だけではなく、「予想以上の」が含まれるという点が重要です。
オーバーシュートが発生すれば、「ロックダウン(都市封鎖)」の実施や「非常事態宣言」が発令される可能性もあります。ただし、オーバーシュートは感染者の絶対数ではなく「予想の範囲か否か」によって判断されるため、その対応に慎重さが求められています。
パンデミックやアウトブレイクとの違い
新型コロナウイルスに関する報道では、オーバーシュートだけではなく「パンデミック」や「アウトブレイク」などの言葉も多用されています。
それぞれの言葉の意味を見ていきましょう。
アウトブレイク
アウトブレイクは「日常的な発生頻度を超えた感染症の発生」を意味します。通常の発生レベルを超えた感染症の発生はすべてアウトブレイクとみなされるため、院内感染によるアウトブレイクも起こり得ます。
エピデミック
「一定期間内に一定の地域における、通常の予測を超えた感染症の急激な発生」がエピデミックです。エピデミックの原因としては、おもに下記が考えられています。
- ウイルスの急激な増加
- ウイルスの毒性変化
エピデミックは、特定の地域や国内だけではなく、数か国にまたがって発生することもあります。
パンデミック
「エピデミックが発生した感染症が広範囲で同時流行した状態」がパンデミックです。ウイルスの種類によっては、パンデミックによって多数の死者が出ることもあります。なお、パンデミックは「世界的大流行」とも呼ばれます。
感染症流行の過程
感染症のなかでも広く知られているのは、季節性インフルエンザでしょう。季節性インフルエンザは、毎年冬季に北半球で局所的に流行(エピデミック)します。A型、B型のインフルエンザは過去にほとんどの人が感染して免疫を持っているため、爆発的な感染をするケースは稀です。
しかし、新型のウイルスに対する免疫を持っている人はいないので、感染者の増加(エピデミック)を引き起こしやすくなります。
エピデミックの例では、重症急性呼吸器症候群(SARS)が有名です。2002年11月16日に中国南部にある広東省で発生したSARSは、インドよりも東のアジアとカナダを中心に32の地域や国に拡大していきました。2003年3月12日にWHOがグローバルアラートを発してから同年7月5日の終息宣言までに、8,000人を超える感染例が報告されています。
予想以上に感染が拡大したウイルスを制御できなければ、国境や大陸を越えた世界的な大流行(パンデミック)が起こります。パンデミックはウイルスの感染力だけではなく、人口密度や移動ネットワークもあと押しするので、現代では時期や場所を問わず起こり得ると考えていいでしょう。
毒性の強いウイルスがアウトブレイクを繰り返すケースもあります。たとえば、50%という致死率の高さでしられているエボラウイルスは、1976年から2019年の間に30回を超えるアウトブレイクを起こしています。
エピデミックやパンデミックの発生はウイルスの特性によっても異なりますが、新型コロナウイルスには下記のような特性があったために、パンデミックが発生したと考えられています。
- 無症状でも感染力がある
- 感染者の8割前後は軽症か無症状
新型コロナウイルスは水面下で感染を拡大させる生存能力に長けたウイルスといもいえます。
まとめ
普段聞き慣れない言葉を耳にする機会が増えたということは、それだけ新型コロナウイルスの感染が世界的な問題になっていることを意味します。意味がわかりづらいと他人事のように感じられてしまいますが、すでに身近で起きているという認識が必要です。
感染症は新型コロナウイルスだけではありません。季節性のインフルエンザウイルスも毎年多数の死者を出しています。感染症に関わる用語や、それぞれの対策法などを知って、感染症の拡大防止に役立てていきましょう。