米労働省が2020年4月3日に発表した3月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数70.1万人減、(2)失業率4.4%、(3)平均時給28.62ドル(前月比+0.4%、前年比+3.1%)という内容であった。(1)非農業部門雇用者数と(2)失業率は極めて弱い内容であったが、(3)平均時給だけは漸増基調を維持した。

(1)3月の米非農業部門雇用者数は前月比70.1万人減となり、市場予想の10.0万人減を大幅に下回った。米国で雇用が減少したのは2010年9月以来で114カ月ぶり。3カ月平均の雇用者数も一気に7.1万人減に落ち込んだ。3月だけで飲食業の雇用者が41.7万人減、小売業でも4.62万人減と、サービス業を中心に雇用が失われた。

(2)3月の米失業率は4.4%となり、約50年ぶりの低水準だった前月から一気に0.9ポイントも悪化。市場予想の3.8%を大幅に上回った。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率も62.7%に低下(前月 : 63.4%)しており、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)に至っては前月から10.7ポイント悪化して8.7%に上昇した。

(3)3月の米平均時給は28.62ドルとなり、前月から0.11ドル(11セント)増加して過去最高を更新。伸び率は、前月比+0.4%、前年比+3.1%と、いずれも予想(+0.2%、+3.0%)を上回った。就業者の減少が、サービス業など比較的低賃金の業種で顕著だったため、全体としては賃金が上昇したと見られる。

米3月雇用統計は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が想定以上に早めに出た格好だ。米国で雇用情勢が急激に悪化したのは3月後半からであり、3月第2週の調査である今回の雇用統計にはそうした悪化はごく一部しか反映されないとの見方が多かった。しかし、実際には3月半ばの段階で雇用情勢が大幅に悪化していたことが確認された。3月後半の2週間で失業保険の申請が1,000万件を超えているため、次回4月の雇用統計では失業率が10%を超える可能性が高いと見られている。

なお、市場は今回の米3月雇用統計にまちまちの反応を示した。さらなる雇用情勢の悪化が必至と見られる中では今回の雇用統計に対する評価が定まりにくかったようだ。この日のドルは対円だけでなくユーロやポンドなどほとんどの主要通貨に対して上昇。一方、米国株は主要指数が1.5%前後下落した。他方、米長期債は僅かに買いが優勢(長めの長期金利は小幅に低下)だった。

為替については、新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界経済の大幅な落ち込みは避けられないとの見方が広がる中、基軸通貨であるドルに逃避的な買いが集まったと見ることもできそうだ。