既報のとおり、個人・家庭向けOffice 365は2020年4月22日からMicrosoft 365へと名称が変わる。合わせて、中堅中小企業向けOffice 365もブランド再構築が行われる予定だ。具体的には「Office 365 Business Essentials」を「Microsoft 365 Business Basic」、「Office 365 Business Premium」を「Microsoft 365 Business Standard」、「Microsoft 365 Business」を「Microsoft 365 Business Premium」と呼称が変わる。
Microsoft 365は、Windows 10 EnterpriseとOffice 365、セキュリティ強化やデバイスを管理するクラウドサービスのEMS(Enterprise Mobility+Security)をセットにしたソリューションだが、この構成が適用されるのは大企業向けのOffice 365・Microsoft 365 Enterpriseのみ。中堅中小企業向けのMicrosoft 365 Businessは、Azure Active DirectoryもSmall Businessに限定され(E3/E5はPremium P1/P2)、OSもWindows 10 Businessとなる。
Microsoft 365 Personal(Microsoft 365 Familyの日本展開時期は未定のため除外)とMicrosoft 365 Business各種を大雑把に比較してみた。Microsoft 365 PersonalやMicrosoft 365 Business Basic、Microsoft 365 Business StandardはOSライセンスを含んでいない。その点で見れば、Microsoft 365 PersonalはOffice 365サブスクリプションプランであるOffice 365 Soloの後継製品という認識が正解だろう。
ライセンスという観点では、インストール可能台数も気になるところだ。Office 365 Business StandardやOffice 365 Business Premiumは、1ユーザーあたり5台のPCに対するサインインを許可している。Microsoftの公式ブログはライセンスに言及していないが、2018年10月から同様に制限を緩和したOffice 365 Soloの存在を踏まえると、5台という線は変わらないと思う。
多くの一般ユーザーからすれば、ラインナップ間で機能差も多く煩雑に見える名称変更だが、背景には「Microsoft」というブランドの再構築が存在する。2014年3月にWindows AzureからMicrosoft Azureへ改称し、Windowsの存在感が薄らぎつつあることは本連載でも過去に触れてきた。今回のブランド再構築はその流れに沿ったものだろう。
ただし、Office 365を全廃するわけではない。冒頭紹介した改称は中堅中小企業向けOffice 365に限定しており、大企業向けのOffice 365 for Enterpriseやファーストラインワーカー向けのOffice for Firstline Workers、教育機関向けのOffice 365 for Education、政府機関向けのOffice 365 for Governmentは従来どおり。一気にMicrosoft 365に改称しないのは、大企業向けと比べると影響範囲の狭い中堅中小企業向けで様子を見るつもりではないか。
阿久津良和(Cactus)