既報の通りIntelは第10世代のHシリーズCoreプロセッサ6製品を4月2日に発表し、翌4月3日には日本でもリリーズが公開されたが、これに合わせてインテル(株)による説明会が開催されたので、この内容をお届けしたい。

といっても、説明の内容そのものは特に新しい話はなく、単にスライドが日本語化された程度でしかない。ただいくつかQ&Aの際に補足説明が行われたので、これをご紹介する。まずこちらに出てきたCore i7-10850Hの"Partial Unlock"であるが、倍率は変更できるものの、無制限に上げられる訳ではないという話で、制約が掛かっているという意味だそうだ。ただ、自分で冷却方式を変えるとかが容易なDesktop向けと異なり、Gaming向けとは言えノートであれこれ冷却方法を変更というのは普通は非常に難しく、そう考えると現実的にはPartialであっても全然問題は無い気もする。

また内蔵GPUであるが、やはりIntel UHD Graphicsとの事。理由はというと、これも先の記事で書いた通り、「Hシリーズのノートの場合はDiscrete Graphicsを組み合わせるのが普通だから」という理由で、ただし

  • Hybrid Graphicsを利用する
  • Intel Media Encoderを利用する

というUsage Modelが想定されるので、GPU無しのHFシリーズではなくGPUありのHシリーズとして提供した、という話であった。

また第9世代のHシリーズとの性能は? と尋ねた所「まだ社内でデータを取っている段階なので、具体的な数字は現時点では出せない」と断ったうえで、「(第9世代と比較して)Double Digitのパフォーマンス向上がある」とした。要するに10%台の性能改善は期待できそう、という話である。もっとも「何と何を」「どうやって」比較するかがはっきりしないのでちょっとよく判らない所はある。例えばCore i7の場合、第9世代のCore i7-9850Hと第10世代のCore i7-10875Hを比較した場合、Base Frequencyは2.6GHz→2.3GHzと落ちている代わりにMax Turboは4.6GHz→5.1GHzと引き上げられており、これだけで10%ほどの動作周波数改善ではある。ただむしろコア数が6→8に増えたことの影響の方が大きそうで、仮にBase Freqencyのままで考えても2.6GHz×6 : 2.3GHz×8≒1:1.18で18%ほど性能の引き上げが出来ている事になる。このあたり、Intelが今後どういう形で性能向上を示すのか、ちょっと興味ある部分である。

話としては以上であるが、余談を一つ。今回の発表に合わせて本国よりComet Lakeのダイ写真も発表された(Photo01)。これと、以前公開された第9世代Coreというか、8コアCoffee Lakeのダイ写真(Photo02)を上下に並べてみたのがこちら(Photo03)。横幅を揃えると高さも一緒で、ためしに重ね合わせをしても相違点が見つからない、というほどに同じである。実際には細かな修正はあるが、それがぱっと見判るほどには大きなものでは無い、という事であろうが、そんな訳でComet LakeがほぼCoffee Lakeというか、そもそも8コアのCoffee LakeがいわばCoffee Lake+みたいなところがあり、Comet LakeはさしずめCoffee Lake++といったあたりになる事が、改めて確認できた形だ。

  • Intel、改めて第10世代HシリーズCoreプロセッサを説明

    Photo01: 左端がUncore(ISPやMedia Codec、PCIe、Memoryなど)、右端がGPUで、間にCPUコア×8の構成。

  • Photo02: これはPhoto01にあわせて180度回転させている。配線層の比較的上層レベルと思われる。

  • Photo03: 参考までに8コアのComet Lake(上)とCoffee Lake(下)の写真を上下に並べてみたもの。

ところで前回の記事の最後で、この第10世代HシリーズCoreプロセッサの連続維持性能はどんなものか? という話に触れたが、今回第9世代と比べてBase Frequencyが若干落ちているのは、やはりコア数が増えた事と、Max Turbo Freqencyを引き上げるためには多少マージンを増やしておかないといけないというあたりが理由と思われる、逆に言えば、Base Frequencyでの連続稼働を想定すると、Ryzen 4000 H/HSシリーズはBaseで2.9~3.3GHzと比較的高めを維持できており、このあたりでやや第10世代HシリーズCoreにとってはビハインドということになる。実際にはこのHシリーズとかはノートに組み込まれる形での出荷となるので、放熱はノートPCベンダーの設計に依存するわけで、イコールコンディションでの比較は非常に難しいのだが、少なくとも第10世代HシリーズCore側のビハインドはスペックからは見えてこない、というあたりは致し方ないのかもしれない。