新型コロナウイルスは世界中で猛威を振るい続け、今や私たちの生活はすっかり様変わりしてしまいました。学校の休校やイベントの自粛、在宅勤務の要請のほか、最近では、各県から外出自粛が呼びかけられるほどです。政府による緊急事態宣言までは出されていないものの(3月29日時点)、それさえギリギリの状態だといいます。
テレビやネットでも報道が絶えない新型コロナウイルスですが、消費動向にも大きな影響を与えています。各業種で、どのような変化が起きているのか、また、こうした状況の中、私たちはお金とどう向きあえばいいのか、FPの立場から考察してみました。
消費活動への影響は?
新型コロナウイルスによる影響は、各方面へ広がっています。では、日本における感染拡大がすでに懸念されていた2月、国内の消費はどのように動いていたのでしょうか。
ナウキャストとJCBが提供する「JCB消費NOW」によると、2月前半(2月1日~15日)と2月後半(2月16日~29日)の国内消費動向の速報データは、以下のようになっています。
このデータから消費の動きを読み取ると、この2月には、以下のような特徴があることがわかりました。
●旅行や宿泊、レジャーを控える人が増加
まず、大きなマイナスが目立つのは、旅行など観光での消費です。「JCB消費NOW」によると、旅行宿泊は、2月前半では過去3年で最大の下げ幅となったそうです。航空旅客も、2月前半で8%、2月後半で12.7%のマイナスが生じました。3月29日現在では、外務省から、全世界への不要不急の渡航自粛要請が出されており、各航空会社で国際線の大幅な減便も実施されています。
また、映画館や遊園地などのエンターテインメント、レジャーにおける消費もマイナスとなっています。特に、遊園地は2月後半で11.1%のマイナスと、大きな減少が見られます。イベント自粛要請の延期が発表されたことにより、3月はそれ以上の消費の落ち込みがありそうです。なお、娯楽や交通、居酒屋、百貨店などの消費も前年比マイナスとなりました。
●医薬品、スーパー、コンビニエンスストアでの消費が増加
一方、消費が伸びているのが医薬品やスーパー、コンビニエンスストアでの消費です。中でも、新型コロナウイルス感染予防のため、マスクや消毒液への需要が大幅に高まったことが起因してか、医薬品の消費が大きく増加しています。2月後半では20.9%ものプラスとなっており、医薬品・化粧品小売業(ドラッグストア)も、2月後半は6,4%のプラスと消費が伸びています。
また、スーパーでは特に、2月後半の消費が19.2%も伸びており、医薬品に次いで大きな伸び率となっています。これは、3月2日から開始した全国の小中高の休校を控えて、食料品や生活用品を多めに買い出しする家庭が増えたことに加え、2月末にトイレットペーパーなどの「買い占め騒動」が起こったことが、消費増加の一因と考えられそうです。
全体として、旅行など外出して行う消費はマイナスとなり、医薬品や生活用品などの消費の伸びが目立つ結果となりました。今後、各県から出された外出自粛要請や休校がしばらく続くとなれば、「コンテンツ配信」や「EC」などの「巣ごもり消費」が伸びていく可能性があります。
今後の生活でどうお金と向き合えばいい?
新型コロナウイルスにより、生活が変化し、お金の使い方もずいぶん変わりました。休校の影響などにより家庭で過ごす時間が増えているなら、子どもの食費や水道光熱費などが高くなっているでしょう。
一方、外食費や交際費、レジャーなどにかかるお金は減っているはずです。そして、多くの家庭が収入の変化に見舞われ、先々の生活に不安を抱えています。このような状況下で、私たちはどのようなことに気を付けてお金と向き合えばいいのでしょうか。
1.1ヶ月の収支を記録する
新型コロナウイルスのような感染症が蔓延し、さらに収入まで不安定になり、「これからの生活が心配でたまらない」という人も多いでしょう。しかし、ただ不安になるのではなく、見えないものを「見える化」させ、そこから対策を講じることが大切です。
たとえば、1ヶ月のお金の流れを把握していない人は、この機会にアプリなどを使って家計管理を始めてみてはいかがでしょうか。何にいくら支出しているのかわかれば、節約すべき無駄使いポイントが見えてくるはずです。
同時に、削れる固定費がないか確認してみましょう。通信費なら、スマートフォンのプランを現在の使用状況に合わせて変更したり、格安スマホに変えたりした方がお得かもしれません。光熱費も、電力自由化やガス自由化が始まり、場合によってはサービスの切り替えによって安くなることがあるのです。
2.生活費のダウンサイジングを試みる
新型コロナウイルスによる経済への打撃は大きく、政府は国民への給付など経済対策を検討しています。しかし、それがいつどのような形で行われるかは未だ不透明です。新型コロナウイルスの影響が長引くことを踏まえると、今のうちにできるだけ生活費をダウンサイジングしておくことも必要でしょう。
そのためにはまず、1で挙げたように、収支を記録してみることです。無駄使いを発見して減らすだけで、意外とスムーズに節約ができるかもしれません。
3.自分が保有している資産を再確認する
これを機に、自分が保有している全資産を確認してみましょう。「お金が足りない」と漠然とした不安を抱えるよりも、「自分は今これだけのお金がある」と認識したうえで、「では、仮にどのような事態になればいくら足りないのか」を明確にし、その対策を考えるほうがはるかに建設的です。
預貯金のほか、保険や株式などの金融商品、または休眠預金などがないかもチェックしてみましょう。
4.収入アップにつながる行動を取る
今回、これまでにない世界的な規模で、外出自粛や在宅勤務の要請が行われました。それに伴い、業務がテレワークに移行するなど、就業スタイルの変更を余儀なくされた方も多いでしょう。これをきっかけに、図らずも働き方改革が推し進められ、在宅勤務など働き方の多様化が広まる可能性があります。
さらに、個人が会社に頼らず収入を上げる努力がますます求められるようになるかもしれません。家にいる時間が長くなった分、在宅でもできる副業を始めるなど、何か収入アップにつながる行動が取れればなお良いでしょう。
生活支援の制度も知っておこう
3月25日から「生活福祉資金の特例貸付」が開始しています。これは、状況次第で10万円~最大80万円が無利子・保証人不要で借りられる制度です。本稿では、新型コロナウイルスによって消費動向が変化したことや、これからのお金との向き合い方について解説しましたが、こうした制度を知っておくのも、無駄に不安を大きくしないための大事な要素です。
新型コロナウイルスの終息はまだ見えませんが、こういう事態だからこそ、できることを確実に行っていきましょう。