突然ですが、入社式や新入社員研修って、何のために行われていると思いますか? これらは、ただの新人の通過儀礼だと受け取られることもありますが実はそうではありません。獰猛な野獣がいる荒野に、武器も持たず、戦い方も教えられず、目的地も告げられずたった一人で放り出されたら、誰だってボロボロになってしまいますよね。
ちゃんとスタートラインに立ち、これから始まる壮大な物語を歩みだせるように、入社式や研修は行われています。
そこで今回は、新社会人の方々に、入社した会社に早くなじめるための、とっておきのコミュニケーションのポイントを3つお伝えしたいと思います。実はとってもシンプルなので、先に答えを言ってしまいますね。「(1)挨拶」「(2)返事」「(3)笑顔」です。
新社会人がすべき挨拶のポイント
(1)から順に説明していきます。皆さんも子どものころから「挨拶をしなさい」と何度も言われてきたと思います。幼いうちから当たり前に言われすぎていて、改めてその意図を考えることは、案外少ないかもしれません。
私は、挨拶とは心のドアをノックすることだと捉えています。相手に心を開いてもらうためのアプローチです。例えば、ドアが閉ざされたままであればいつまでたっても相手には近づけません。反対に、ノックもせずにガチャリとドアを開けてズカズカと入っていけば、嫌われてしまいます。
私は常に、自分から進んで挨拶をするようにしています。会社の入っているビルでも、どなたに対しても挨拶や会釈をします。人は挨拶をしてきた相手にはプラスの感情を抱くものです。だからこそ、自分から発信することがとても大切です。
あ:明るく
い:いつも
さ:先に
つ:常に
挨拶標語として、覚えていて損はありませんよ。
新社会人がやるべき返事の仕方
次に(2)の返事についてです。「はい!」という返事は本当に大事です。「愛される人材の条件」ナンバー1に位置するといっても過言ではないかもしれません。
例えば飲食店で、「コーヒーをお願いします」と注文したとします。このとき、「お待ちください」と言われるか、「はい。少々お待ちくださいませ」と言われるかで印象はまったく違います。
「はい!」という言葉は、それだけで、「分かりました」「受け止めました」「了解しました」「承知しました」といったことを表せる非常に便利な言葉です。
よく、"会話のキャッチボール"という表現をしますが、キャッチボールをするためには一度相手からきたボールを受け取らないといけませんよね。
ところが、この「はい!」という一言が抜けてしまうとキャッチボールというより、相手が投げてきたボールを真正面から打ち返しているような印象を与えてしまいますので、ぜひ意識して「はい!」と返事をしてくださいね。
難しい内容であっても、一度相手の言葉を受け止めて、その後に質問や相談をすれば良いのです。
新社会人に必要な笑顔という教養
挨拶や返事なんて、当たり前すぎて面白みがないと思うかもしれません。でも、挨拶一つ、返事一つまともにできなくて、ハイクオリティの仕事ができるのでしょうか?できる人ほど、当たり前のことをバカにしないでちゃんとやります。
(3)の笑顔も、挨拶と同じように相手に心を開いてもらう効果があります。笑顔は、世界共通言語。道を尋ねるときだって、眉間にしわの寄った怖い顔の人ではなく、笑顔で感じのいい人に声をかけると思います。
楽しい時や嬉しい時に笑顔を作るのは難しくありません。大切なのは、「しんどい時にも笑えるか」です。
新生活、分からないことばかりで不安があったり、仕事が終わらずに余裕がなくなってしまったり、周囲の人の何気ない一言で心が折れそうになる日もあるかもしれません。でも、だからといって自信のない顔をしたり、わざわざ不機嫌な顔をしたりして周囲の人に気を遣わせてしまうのは、幼稚な行為です。
嬉しくなくても意識して笑う練習をしていると、いつのまにか心まで明るくなってきます。最初は無理して笑顔を作っていてもいいです。表情筋は筋肉ですので、鍛えているうちに自然な笑顔が身に付きます。社会人として、「笑顔」は教養ですよ。しっかり筋トレしていきましょう!
さて、本日お伝えしたこの3つのポイントは、どれも新入社員だから大切なのではありません。部長になっても、社長になっても、挨拶、返事、笑顔ほど重要なコミュニケーション術はありません。
コミュニケーション力とは、一言でいうと「人に好かれる力」だと私は考えています。ぜひ、「愛される人材」を目指して精進してくださいね。皆様のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
執筆者プロフィール :朝倉千恵子(あさくら・ちえこ)
株式会社新規開拓 代表取締役社長
小学校教員を経て、一般企業の営業職として入社。営業未経験ながら、礼儀礼節を徹底した営業スタイルを確立し、3年で売上NO1、トップセールス賞を受賞。
04年株式会社新規開拓を設立。現在までに延べ17万人の社員研修・人材教育に携わる。女性の真の自立支援、社会的地位の向上を目指した、TSL「トップセールスレディ育成塾」を主宰。卒業生は2,500名を超える。
著書は全39冊、累計売上部数は約48万部。主な著書に、『コミュニケーションの教科書』(フォレスト出版)、『すごい仕事力』(致知出版社)ほか多数。最新著は『仕事で凹んだときに』(サンクチュアリ出版)。