iPhone 11シリーズの広角レンズを使いこなすコツ、前回の「iPhone 11の広角カメラを極める! 美しい構図に仕上がる“三分割法”とは」に続き、2回目の今回は「遠近感」について解説します。
広角撮影では被写体にグッと寄りたい
近くのものが大きく、遠くのものが小さく写る……というのは当たり前に聞こえるかもしれません。しかし、レンズ越しに捉えられた写真や映像では、必ずしもそうではないのです。
例えば、テレビの野球中継を見ると、ピッチャーとバッター、背後の観客席との距離がかなり近いように見えます。実際には、それぞれかなり離れているのですが、超望遠レンズの“圧縮効果”でそう見えるのです。
では、広角レンズではどうなるかというと、反対に肉眼より遠近感が強調されて写ります。近いものはより大きく、遠くのものはより小さく写るとされています。ただし、そう写すには、近くにある被写体にぐっと寄ることが条件。そうでないと、広角特有の強い遠近感ゆえ、何もかもが遠くにあり、抑揚や立体感に乏しい写真になりがちです。もちろん、それが意図であったり、状況的に寄ることが難しければ別ですが、広角撮影ではできるだけ被写体に寄ることがカッコいい写真に仕上げるコツです。
iPhone 11シリーズのカメラは、標準レンズや望遠レンズがオートフォーカスであるのに対し、広角レンズは固定焦点、すなわちピントを合わせる機能がありません。「写ルンです」などのレンズ付きフィルムと同じです。13mm相当ほどの超広角だと、パンフォーカス(手前から奥までピントが合うこと)になるので、オートフォーカスは必要ないという判断のようです。
一眼レフやミラーレスカメラでは、超広角レンズでもピント合わせがシビアだったり、大きなボケが得られる“副作用”で広角らしいダイナミックさが薄れがち。しかし、iPhone 11の広角レンズは手前から奥までピントが合い、遠近感の強さがくっきりと表現できます。
広角撮影では線を意識して構図を取る
では、その遠近感をどうやって生かすか、という応用の話に移りましょう。前回と同様に、やはり構図が重要になってきます。遠近感が圧縮される望遠に比べて、広角は被写体が画面に描く「線」が視覚的に目立ちます。それを積極的に生かすことで、かっこいい写真が撮れるのです。
線の描き方はいくつかのパターンがあります。その名の通り、S字や逆S字の曲線を描く「S字構図」、複数の線がある一点に集まる「放射線構図」、目立つ線が画面の対角線付近を横切る「対角線構図」、左右対称の「シンメトリー構図」など、挙げたらキリがありません。ただ、実際に我々プロカメラマンが撮影のたびにパターンを意識しているかというと、答えは“NO”です。自分の立ち位置やアングル、カメラの振り方、使用するレンズをアレンジしながら、感覚的にバランスのいい構図を作った結果、いずれかのパターンに当てはまるのだと思います。
その技術を会得するには、たくさん撮ることも重要ですが、撮った写真を見返すことも大事だと思います。
奥行きを感じさせる「消失点」も意識したい
コツをひとつ挙げると、ポイントとなるのが「消失点」を作ることです。消失点とは、距離が遠ざかることで線が集まっていくポイントのこと。写真を見る人の視点はそのポイントに引き寄せられ、その効果として平面の写真に奥行きを感じるのです。壁面などを正面から撮影したり、線が規則的に並ぶようなグラフィカルな構図は別ですが、画面内に遠近がある場合は消失点があることが多いはず。広角は消失点を作りやすく、その効果も高いといえます。
カメラを構えていて、何か収まりが悪いなぁ……というときは、自分が少し動くことで線がきれいに奥へ集まり、バランスのいい構図にまとまることがあります。というわけで、次回はアングルについて解説したいと思います。