初参加の1組で決勝まで勝ち進む快進撃。振り飛車党ながら、久保利明九段の振り飛車を居飛車で迎え撃つ
第33期竜王戦1組ランキング戦(主催:読売新聞社)の準決勝、▲久保利明九段-△佐藤和俊七段戦が3月30日に関西将棋会館で行われました。勝者が決勝トーナメント進出を決める、大一番を制したのは佐藤七段。この勝利で自身初の決勝トーナメント出場となりました。
振り駒の結果、久保九段の先手に。久保九段も佐藤七段も振り飛車党なので、相振り飛車になるのが自然です。しかし振り飛車党同士の対局では、片方が牽制して対抗形に、はたまた両者とも牽制し合った結果、相居飛車になるということもあります。本局も久保九段が3手目に▲9六歩と突き、相手の出方をうかがうと、佐藤七段も△9四歩と突いて態度を明らかにしません。
久保九段が▲6六歩として振り飛車の態度を表明すると、佐藤七段は△8四歩で居飛車を選択。相振り飛車にはなりませんでした。結局、戦型は先手の急戦向かい飛車対後手の居飛車左美濃に落ち着きます。
双方が8筋に歩を打って飛車先を止め、その歩を支えるために角を打ち合います。やがて両者の攻め駒の飛車角や桂歩の配置が線対称になりました。こうなると7~8筋から容易に動くことができません。
千日手やむなしかと思われた局面で、久保九段は積極的に打開していきました。ところがこの決断を久保九段は局後に悔やむことになります。佐藤七段は8筋の突破を許す代わりに勢力を玉周辺に結集。玉頭から襲い掛かって優位を築きました。
6、7筋に竜・馬・と金を作られはしたものの、佐藤玉は銀冠+飛車に守られて鉄壁です。馬をズバッと切り飛ばし、相手玉頭にと金を作って一気に寄り形を作りました。久保九段も持ち前の粘り強さを発揮して、簡単には土俵を割りませんが、差は詰まらず。佐藤七段は攻め駒を盤上に足していく着実な寄せで先手玉を追い詰め、最後は即詰みに打ち取りました。
この勝利で佐藤七段は1組決勝に進出。優勝をかけて羽生善治九段-稲葉陽八段戦の勝者と対戦します。今までにランキング戦での優勝経験はなく、もし次も勝てば初優勝が1組ということになります。また、決勝トーナメント進出も初めて。ここまで6組から1組まで、すべて昇級者決定戦を勝ち上がっての昇級でした。
佐藤七段は1978年6月生まれの41歳。2003年に四段昇段を果たすと、コンスタントに好成績を残します。2008年度の第2回朝日杯将棋オープン戦でベスト4に入ると、翌第3回でもベスト4に進出。2016年度の第66回NHK杯テレビ将棋トーナメントでは準優勝を果たしました。また、2018年度の第77期順位戦C級2組では9勝1敗でC級1組へ昇級。苦節15期での初昇級でした。
ここまで述べた実績の通り、佐藤七段は惜しいところまではいくものの、優勝がまだありません。ランキング戦優勝は棋戦優勝回数には数えられませんが、優勝は優勝。是が非でも次も勝ちたいところでしょう。