iPhoneを充電するためのケーブルは、「MFi」なる認証を取得済みの製品を選びましょう──というのは、おそらくiPhoneユーザーであれば一度は聞いたことがあるはずです。

では、MFiの認証がない製品を使った場合は、具体的にどのような問題が発生しがちなのでしょうか? 今回は、現在市販されている他社製(非純正品)のiPhone充電ケーブルをいくつか集め、特徴を見ていきます。

  • MFi認証のバッジが印刷されたサードパーティ製品のパッケージの例

他社製のケーブル、純正品にはない特徴を持つ製品も

MFiとは「Made For iPhone/iPad/iPod」の略で、Appleによる認証を取得したアクセサリーの証です。これらを製造しているのは、Apple以外の「サードパーティ」と呼ばれるアクセサリーメーカーですが、iOSのバージョンアップ後の動作も保証されていることが特徴です。

  • AppleのホームページにはMFiロゴの画像のほか、後述する模造品や偽造品との見分け方が掲載されています

これらは、ケーブルの電気的特性としては、iPhoneやiPadに付属する純正のLightningケーブルと同じですが、コネクターを覆うカバー部分が純正品より大柄だったりと、外見面は必ずしも純正品とイコールではありません。サードパーティメーカーのロゴが入っている製品も多々見られます。

  • 左が純正品、右がダイソー製のMFi取得済み互換ケーブル。一般的にMFi認証品は純正よりもコネクタのカバー部(ハウジング)のサイズが大きめです

一方、外皮が破れやすい純正品に対して、ナイロンを編み込んだり、素材にステンレスを採用した製品もあるほか、ケーブルの付け根が破損しにくいよう二重構造を取り入れたりと、さまざまな工夫が見られるのも特徴です。

  • 強度を重視した、純正品にはない仕様のLightningケーブルもあります。写真はエアージェイ製のステンレスLightningケーブル

ケーブルの長さについても、10cm程度のショートタイプから5mを超えるものまで、さまざまな長さがラインナップされており、0.5/1/2mの3種類しかない純正品に比べて、選択の自由度が高いのが特徴です。こうした種類の豊富さは、純正ケーブルには真似ができません。

たとえ充電できてもリスクが……MFi未取得のケーブルはここがコワイ!

さて、こうしたAppleの認証を得ているケーブルが広く販売されている一方で、MFiのロゴのない、MFi認証未取得のケーブルも一部には流通しています。これらを使うと、どのような影響があるのでしょうか?

  • ネット通販などで入手できるMFi未取得のケーブル。MFiロゴはおろか、メーカー名の記載すらありません

MFi認証済のケーブルであれば、仮に充電できない不具合が起こっても、その原因は断線など物理的な障害にほぼ限定されます。しかし、MFi未取得のケーブルだと、OSのバージョンアップでソフトウェア的に使えなくなる(リジェクト)場合もあるため、原因の特定に難儀します。どうすれば治るか分からないうえ、夜中のバージョンアップで朝起きたらいきなりそのような状態になっていることもあるので、かなりのストレスです。

「いやいや、それは単なる脅しで、実際にはほとんど起こらないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、こうした直接的なトラブルに運良く遭遇しなかったとしても、ほかにも問題は山積みです。

例えば、充電自体はできるにも関わらず、iPhoneのバッテリーにダメージを与えがちな挙動は、筆者が知る限り、かなり高い確率で発生します。

今回、本稿の執筆にあたって2本のMFi未取得ケーブルを入手してテストしましたが、どちらも充電は問題なく行える反面、1本は異常な発熱が、もう1本は充電中に電流値が乱高下する症状が見られました。iPhoneのハードウェアに負担をかけていることは間違いなく、そのまま使い続けると大切なiPhoneの故障にもつながりかねません。

もともと、これらの多くは、純正品であるかのように見せかける模倣品もしくは偽造品であり、外観だけではほぼ見分けがつきません。そのため、発火や爆発といった事故が発生した場合、そのケーブルにではなく、iPhone本体側に問題があるように扱われがちです。Appleにとってはいい迷惑で、そうしたトラブル防止のために導入されたのが、ほかならぬMFiという経緯があります。

  • 左が純正品、右がMFi未取得ケーブルです。もともと模倣品もしくは偽造品として作られているため、外観は純正品に酷似しています

  • 左が純正品、右がMFi未取得ケーブル。USB-Aコネクタまでそっくりなことが分かります

Lightningケーブルは高価だといわれますが、製品の価格に跳ね返ってくる状況を作ったのは、こうした模倣品や偽造品を作るメーカーであり、それを使い続けるユーザーにも責任の一端はあるといえます。こうした経緯を踏まえれば、iPhoneのユーザーである限り、MFi非認証のケーブルは使うべきではないことが分かるはずです。

実はLightningケーブルじゃない? 「iPhone充電ケーブル」とは

ところで、こうしたMFiを取得していないケーブルの中で少々特異な存在といえるのが、百均(100円ショップ)を中心に販売されている「iPhone充電ケーブル」です。

  • 百均で売られているiPhone充電ケーブル。写真は左から、キャンドゥ、ダイソー、セリアで買い求めた品です

これらは、Lightningポートに挿し込める同サイズの端子を搭載していますが、その先端をよく見ると、信号線が表面にしかなく、しかもデータ通信に使う信号線が省略されています。それゆえ、パッケージにも「Lightningケーブル」ではなく「iPhone充電ケーブル」など曖昧な名称で記載されていることがほとんどです。

  • コネクターの拡大図。充電には使用しない一部の信号線が省略されています

  • 裏面。こちらには信号線がなく、片面仕様となっています

これらのケーブルは、前述の模倣品や偽造品と同様、特定のiOSのバージョンでは認識されなかったり、また一部のiPhoneや充電器との組み合わせでは電流が流れないなどの問題があります。実際に試した限りでは、iOSは対応範囲内でも、iPhoneの機種が古いと充電されないケースがあるようです。意図しない挙動が起こる可能性があるという点では、前述の模倣品や偽造品と大差はありません。

ただし、これらは純正のLightningケーブルとは外見が明らかに異なるため、純正品と取り違える可能性はまずないうえ、製造元のメーカーもはっきりしており、かつ一部の製品は実用新案を取得していたりと、ユーザーをだます目的で作られた品とは一線を画した作りです。積極的にお勧めはしませんが、割り切って使うという考え方もありそうです。

  • パッケージ。iOSの特定バージョン以上は動作を保証していないことが分かります。電流値についても「1.5~2.1A」「0.7~2.1A」と細かい規定があります

知ってた? 純正のLightningケーブルは破損しても無償で交換できる

ところで、「純正のLightningケーブルは値段が高い」とボヤいている人でも意外と知らないのが、iPhoneに標準添付されている純正のLightningケーブルは、通常の使い方において断線が発生したり、コネクタの付け根の部分が破れた場合は保証の対象となり、新品と交換してもらえることです。

物理的に切断したり、加工を施したり、またケーブルそのものを紛失した場合はさすがにNGですが、そうでないケースでは、Appleのホームページから配送修理を申し込むと、破損したケーブルの10営業日以内の返却を条件に、すぐに代替品が届きます。iPhoneの保証期間内の間は、積極的に活用するとよいでしょう。

  • 所有しているiPhoneのサポートページに行き、サポート対象の項目としてケーブルを選択します

  • 付属の純正ケーブル(1mのLightningケーブル)を選択肢から選んで次に進みます

  • リクエスト完了。あとは到着を待つだけです。サイトには3~5日と記されていますが、一両日中に届くケースが多いようです

  • 届いた交換品。純正のLightningケーブルと同じ仕様です。サポート期間内であれば、基本的に無償交換となるようです

  • 破損したLightningケーブルは、交換品と同時に届く封筒を用い、10営業日以内に返却する必要があります。返却しなかった場合は未返却料、返却した品に破損が見られなかった場合は検査料が請求されます