頂点だ、至高だと書き連ねても、このブランドが持つ求道的な精神を表現するには物足りない。そう、MR-Gは圧倒的な高みにある孤高の存在なのだ。

これまでも鎚起(ついき)荒し鎚目鑢目(やすりめ)といった日本の伝統的技法を積極的に採用。その貴重な外装加工技法は、カシオならではの耐衝撃構造と最先端エレクトロニクスと融合して、我々にいくつもの時計的芸術を見せてくれた。そんなMR-Gの最新作が「MRG-B2000SH-5AJR」だ。愛称は「衝撃丸」。価格は880,000円(税込)。世界限定400本で7月発売予定。

  • G-SHOCK MR-G MRG-B2000SH-5AJR(衝撃丸)

    これが衝撃丸(MRG-B2000SH-5AJR)だ! 見よこのたたずまい

機能や仕様など詳細な情報については別記事『G-SHOCK「MR-G」、2020年スペシャルモデルは兜モチーフの「衝撃丸」』をご覧いただくとして、ここではその外観とディテールを写真でじっくりとお届けしよう。

伝統的な匠の技法と最新のエレクトロニクス技術が邂逅(かいこう)する

MRG-B2000SH-5AJRのデザインコンセプトは「武将の矜持と美意識」だという。旺文社標準国語辞典によれば、矜持とは「自分が優れていると信じて持つ誇り」。それを表現するため、戦国時代の兜や鎧をモチーフとした特殊技法の数々が、その道の匠といわれる職人の手で施されている。

まず「鉄錆地」(てつさびじ)。チタン素材のケースとバンドを鍛造造形して細かな凹凸を作り出し、これを深層硬化処理。ブラウンIPとブルーIPを重ねて(2層に)かけた後、上層のブルーIP被膜のみをを削り取る。これにより、凹み部にのみわずかにブルーが残り、まるで本当に鉄錆で腐食したかのような味わいを演出しているのだ。

ブルーIPの色調は、甲冑に用いられる紺糸威(こんいとおどし)をイメージしたとのこと。鍛造を手掛けたのは、1604年創業、山形城主の御用鋳物師として発祥した菊地保寿堂の十五代目、菊地正直氏だ。

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    まるで本当に腐食しているかのような表現

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    ベゼル上の鉄錆地。量産化の苦労が偲ばれる

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    バンドの鉄錆地

ベゼル上には、この鉄錆地の対角線上に「龍紋」(りゅうもん)が手作業で彫られている。これは滋賀県大津市で祖父の代から続く錺師の三代目・小林正雄氏の手によるもの。手作業だけが可能にする荒々しさと繊細さ、そして勢いを併せ持つ紺糸威の鉄錆地と龍紋。その色調は秒針やインダイヤル、ベゼル内側のリングなどのメタリックブルーにも引用されている。

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    非常にシャープな龍紋。これはもう商品というより作品だ

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    甲冑などにみられる紺糸威を引用したブルー

ダイヤルには和の伝統的文様「三角鱗」が並んでいる。鱗(うろこ)とはいっても龍や蛇の鱗とされており、魔よけの意味で使われることも多い文様だ。インダイヤルソーラーの採用によって、自由度の高いダイヤルデザインが可能なMRG-B2000の特長を生かしつつ、ベゼルの龍紋と意味的にも対をなす見事なデザインワークだと思う。

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    ダイヤルには「三角鱗」が並ぶ。決してトライフォースではない(と思う)

「MRG-B2000」は新モデルなので、ベースレイアウトにも少々触れておこう。MRG-B2000の時刻調整機能は、Bluetoothでスマホと連携するモバイルリンクと、マルチバンド6対応の電波時計となり、GPS衛星による時刻情報取得機能はなくなった。その関係でGPS電波のゲージや都市コードのディスク針が不要になるなど、ダイヤルレイアウトも大きく変わっている。

3時位置には曜日とモード表示を兼ねたインダイヤル、8時位置にワールドタイム、10時位置に24時間計が配置された。個人的な好みでいえば、機能的にも時計らしくて美しい配置になったと思う。これに伴い、MR-Gのロゴマークは12時位置に変更となっている(MRG-G2000では3時位置)。

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    より時計らしいレイアウトになったダイヤル

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    ロゴは12時位置へ。インデックスパーツの精度にも注目

重さは150gで、チタン素材を考えるとやや重く感じる。が、腕に着けるとほぼ気にならないのは、重さが鍛造バックに起因するからだろう。マスバランスが腕側に来るので(腕を振り回したときに荷重が外側に向かない)、数値ほど重さを感じないのだ。それに、この鍛造バックの高級な質感には、むしろこれがいいと思わせるうれしさがある。

G-SHOCKの新たな頂点、MRG-B2000SH-5AJR「衝撃丸」。現代社会を生き抜く武将の矜持と美意識を持って身に着けたい。

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    質感とデザイン性の高い鍛造バック。ヘアライン処理も美しい(※写真の裏ぶたのデザインは最終版の製品と一部異なります)

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    サイドビュー。ケース厚は16.9mm

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    限定モデルをさりげなく主張する「2020 LIMITED」の文字

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    ケースやボタンの精度も驚異的

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    中駒と鉄錆地の質感のコントラストが面白い

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    ケースのテクスチャーもいい

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    クラスプはプッシュ式に加え、ロックするためのスライドスイッチ付き

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    三つ折れ式無垢バックルもブラウンIPでカラーリングされている

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    ケースの固定用ビス

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    LEDを点灯させた状態