佐々木大地五段との2連勝対決は、持将棋指し直しの末、深夜に決着。総手数374手!
木村一基王位への挑戦権を争う、第61期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(主催:新聞三社連合)の永瀬拓矢二冠-佐々木大地五段戦が3月24日に東京・将棋会館で行われました。ともに2勝0敗で、勝った方が紅組優勝に大きく近づく戦いは、なんと267手で持将棋に。指し直し局を107手で制したのは永瀬二冠でした。
持将棋局は佐々木五段の先手で、相掛かりに。佐々木五段の玉付近で戦いが始まりました。永瀬二冠は細い攻めを巧みにつなげていきますが、佐々木五段も持ち駒を次々に自陣に投入して全力で受けて倒れません。
気が付けば佐々木五段の玉はするすると上部へ逃げていき、捕まらなくなっていました。成駒を量産して玉の受け入れ態勢を作り、ついに193手目に佐々木五段は入玉に成功しました。こうなるともう佐々木玉は寄りません。勝負は永瀬二冠も入玉できるか、できたとして持将棋成立のための24点を確保できるかどうかとなりました。
ところがこのとき永瀬玉はまだ自陣の二段目で、銀冠も健在。この玉を無事に敵陣に侵入させつつ、駒を失いすぎてもいけません。
佐々木五段は永瀬玉を寄せるのではなく、駒を取って点数を削る作戦に出ました。永瀬二冠は受けるべき駒は受け、犠牲にすべき駒は捨てて逃走。少しずつ点数を減らしながらも、見事に入玉に成功します。そして、267手目に持将棋が成立。このとき、永瀬二冠の点数は24点ぴったりでした。
持将棋成立は21時30分。この日王位リーグの対局は本局を含めて3局行われていましたが、ほかの2局は18時前には両方とも終了していました。この将棋がいかに熱戦だったかがお分かりいただけるかと思います。
わずか30分の休憩の後、先後を入れ替えて指し直し局がスタート。疲労の残る中、22時から始まった対局は角換わりの将棋に。先手の永瀬二冠が前例のない珍しい仕掛けで戦いを起こしました。
この折衝で桂交換を果たした永瀬二冠は、手にした桂を使って佐々木五段の攻めに対して反撃します。相手の攻め駒を責めて7筋にと金を作ることに成功。リードを奪いました。
一方の佐々木五段も、金取りを放置して手にした桂3枚を3連打する強攻。金と飛車を取らせる間に、桂3枚を生かして永瀬玉に詰めろをかけました。自陣だけを見れば受けが難しいように見える局面。しかし、永瀬二冠は絶妙な手段で危機を回避します。
それは敵玉を攻めるというもの。まずは飛車を打ち込み王手をかけます。逃げる佐々木玉に飛車を成ってさらに王手。佐々木玉は持ち駒を使って受ければ安全にはなるのですが、その瞬間永瀬玉の詰めろが外れてしまいます。これを永瀬二冠は見越していたのでした。
王手の連続で佐々木五段を危険地帯におびき寄せ、自玉の脅威となっていた桂を入手した永瀬二冠。桂を手にしたことで佐々木玉に詰めろがかかりました。受けのない佐々木五段は永瀬玉に必至をかけましたが、永瀬二冠は入手した桂を打って相手の玉を詰まし上げ、勝利を収めました。
指し直し局は107手での決着。終局時刻は日付の変わった0時23分でした。2局合わせて374手の大激戦を制した永瀬二冠はリーグ3連勝。残り2局のうち、1つ勝てば最低でもプレーオフに進出となり、紅組優勝に大きく近づきました。