小田急グループの伊豆東海バスは、静岡県熱海市内で運行する「湯~遊~バス」に4月1日から新型専用車両を導入する。これを記念し、熱海城を会場に「湯~遊~バス 彩(いろどり)」の完成披露式典が3月17日に開催された。

  • 「湯~遊~バス 彩」と芸妓と「あつお」

新型専用車両の導入により、「湯~遊~バス」の専用車両は2両から3両に増加。これまで土休日のみ1日18便の運行だったが、平日も18便運行することになり、観光客から人気の高い「湯~遊~バス」の運行体制が強化される。

■100万人乗車の「湯~遊~バス」

「湯~遊~バス」は1998(平成10)年から熱海市による運行が始まり、2014年4月以降は小田急グループの伊豆東海バスにより運行されている。JR熱海駅からサンビーチや熱海城といった市内の観光地を周遊する循環バスであり、観光客からも人気。バス停には利用者が列をなし、全員が乗車できないときは続行便も運行する状況だという。

市民ボランティアによる車内での観光案内も好評で、伊豆東海バスの運営5周年を迎えた昨年6月26日に100万人乗車も達成。今年2月末、115万人乗車を果たした。

  • 熱海城を会場に完成披露式典を開催。出席者が陣羽織を着て除幕式を行い、新しい「湯~遊~バス 彩」がお披露目された

  • 製作に携った各社に感謝状が贈られる

  • 熱海の情景を意識した装飾

  • リアはデッキ風

そんな熱海市の「湯~遊~バス」が、「見て楽しむ」「乗って楽しむ」に加え、「撮って楽しむ」を目的とした新しい専用バスを導入する。それが「湯~遊~バス 彩」だ。

■「和モダン」デザインの特装車体

「湯~遊~バス 彩」のベース車両は日野自動車の「日野Rainbow 2KG-KR290J4」。臙脂色を基本色とし、差し色として今様色(淡い紅色)、金色で装飾しており、「受け継がれてきた熱海ならではの彩り、温泉街の賑わいや華やかさと懐かしい情緒」を表している。後部はすれ違ったときに印象の残る、東海バス特装バスの伝統形状であるリアデッキを採用した。

  • 「湯~遊~バス 彩」の運転台

  • シートは花々をあしらった今様色

  • 「あつお」も一部の座席に登場

  • 天井に描かれた春の梅

  • こちらは秋の紅葉

  • 組子細工を仕切りに

  • 車内にはパンフレットも常備される

  • 吊り手はダブルで安定性を向上

  • 後部の座席はゆったりと

内装は熱海の梅や紅葉など四季の色とりどりの風景に加え、組子細工を取り入れ、熱海の名所である起雲閣をはじめとする和モダンのイメージとしている。座席のモケットは熱海の花々をあしらい、一部座席に熱海温泉ホテル旅館協同組合公式キャラクター「あつお」もデザインされた。最後部には尾崎紅葉の小説『金色夜叉』をモチーフにした影絵風の装飾も施されている。

■「革新的なデザインのものを導入したい」

完成披露式典で挨拶した東海自動車代表取締役社長の早川弘之氏は、「バスを18便に増やすならば、革新的なデザインのものを導入したい」「内外装を熱海らしく、他にはないようなバスにしました」と語る。熱海市長の齋藤栄氏は、「新しいバスは玉手箱のようで、この素晴らしい車両が走り回る姿を想像するとわくわくします」と述べた。

立案・デザイン・ディレクションを担当した日野自動車の飯塚桂氏は、「東海自動車の多くのアイデアを具現化するのが務め。フロントの片キャブ構造やリアのデッキ風の外観を盛り込めました」と話し、設計・改造・製作を担当した岩戸工業の永田哲也氏は、「すべて手を加えた豪華仕様。ぜひ皆様に愛されてほしい」と期待を寄せた。

  • 『金色夜叉』寛一・お宮をあしらう影絵風の装飾

  • 「湯~遊~バス」利用にはフリーきっぷが便利

  • 既存車両も含め、「湯~遊~バス」は計3両に

完成披露式典は平日の開催だったが、会場となった熱海城の「湯~遊~バス」バス停には多くの人が並び、増便の必要性が待ったなしで感じられた。そんな「湯~遊~バス」に新しい車両が加わり、多くの観光客が利用することになるだろう。