きょう19日に最終回を迎えるフジテレビ系ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』(毎週木曜22:00~)。腫瘍内科を舞台に、決してスーパードクターではない医師が患者と真摯(しんし)に向き合いながら診療していく人間ドラマだが、その描き方もリアルで丁寧だと評判だ。

プロデュースを手がけるフジテレビの太田大氏に話を聞くと、作品づくりへの実直な姿勢が見えてきた――。

  • 『アライブ がん専門医のカルテ』に出演する木村佳乃(左)と松下奈緒 (C)フジテレビ

    『アライブ がん専門医のカルテ』に出演する木村佳乃(左)と松下奈緒 (C)フジテレビ

■「腫瘍内科」を舞台にした理由

――まずは『アライブ』を企画された経緯を教えてください。

最初から医療ドラマを作ろうと思っていたわけではなくて、2人の女性の話を作りたかったんです。僕と今回チーフ監督としてデビューした高野(舞)と脚本の倉光(泰子)さんの3人で、長い期間企画を練っていました。その中で、とてもまっすぐに生きている人と、理由は分からないけれどもその人にとても献身的な人がいて、その2人が友情以上の信頼を得て力を発揮するけれど、献身の裏にはその人に対しての贖罪がある…という企画に行き着きました。何の職業にするかと考えたときに、人を救わなきゃいけない、その感情の逆振れのところにあるのが、医療従事者だと思ったんです。

――そこから“腫瘍内科医”という設定はどこから発想されたのでしょうか?

もし医療ドラマをやるのであれば、いわゆるスーパードクターとか救命医師などは、今までとてもたくさんの作品が作られていますし、病院内の抗争を描いた『白い巨塔』などもあるので、そうではない何か違った角度のものがないか探していたんですね。それでスーパードクターではなく、地に足のついた先生で、オペシーンが少ない、患者さんの人生を重点的に描けるものというところから発想していきました。

そうすると“がん”というのは、これまでとは印象が変わってきているし、実は誰にでもなりうる病気だということで、“腫瘍内科”という設定を監督の高野が持ってきたんです。1人の患者さんに長い期間接する医師で、いろんな人の人生と関わるし、逆にいろんな人生と関わることで背負いすぎて大変な面もあって、ドラマがいっぱいあるんだろうなと想像しました。だから腫瘍内科を舞台にした作品にチャレンジしてみようと思ったんです。

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■普通のドラマなら最後まで引っ張るが…

――初回から描かれていた“医療過誤”のエピソードが第6話で解決したり、高畑淳子さんが演じる民代さんのエピソードが第8話と第9話で最終回みたいな展開になったりと、構成が普通の1話完結ものの医療ドラマにはない面白さがあると思いました。

1つ大きく決めていたのは、木村佳乃さん演じる薫が、第1話の感動的なお話が終わった後に実は…という一面が見えるようにすること。普通のドラマだったら、たぶん最後まで引っ張ると思うんですけど、それをなるべく早く終わらせようと思っていました。

なるはやで解決するには、何話でできるかと考えていった結果、まず秘密が露呈するのが5話、彼女たち2人の関係性が6話の終わりで正常化に達して、7話で医療過誤を起こした須藤(田辺誠一)が謝りに来る。それで7話の終わりはもう2人の心はきれいになり始めて、8話で再び進み出すという感じにしました。そういう構成にしようというのは、最初の段階で決めていましたね。

――なるはやで縦軸を終わらせたのは、エンタテイメント性を高くしようという意図もあったのでしょうか?

毎回、医療従事者として解決していく医療ドラマと、2人の全く違う話が走りますが、その2つの食い合わせがそもそもすごくいいというわけではないので、それを最後までやるとなってしまうと、医療ドラマの部分を純粋に見ていただけないような気がしました。だから、展開を早めることでエンタテイメント性を高めるというのもあるんですけど、腫瘍内科の医療ドラマをきちんと届けるために、早めに消化したいという思いでした。

あと昔、大先輩に習ったことで、“全体でやりたいことを決めたら、それを、想定の半分のなるべく折り返し地点で全部終わらせて、あとはそれに準じてまた作る”という教えに基づいた部分もあります。

――“食い合わせ”のお話をされましたが、普通のスーパードクターものだと、主人公の心情と患者さんのエピソードはあまり重なることはないので、縦軸の物語があったからこそ、些細なセリフや展開にも深みが増していって良い効果が出ているなと思いました。

ありがとうございます。とにかく“隠して隠して”という手法はやめようと言っていたんです。なるべく隠さず、思ったことは必ずお伝えするし、思わせぶりなことはしないというのは心がけました。そういう風潮、そういう時代じゃないかなと思ったんですね。