前回は、医学博士の木村至信氏(以下、キムシノ氏)に、ウイルスと細菌の違いを解説していただきました。結論としては、「細菌よりもウイルスのほうが怖いし、手ごわい」と言えそうです。
では、ウイルスって身体のどこから入ってくるのでしょうか。感染経路を知って、しっかり予防しましょう。
ウイルスは「粘膜」にやってくる
感染症を引き起こす病原体の一つ、ウイルス。ウイルスは自力増殖できないため、動植物の細胞に入り込み増殖を図るわけですが、さてどこから入り込むのでしょうか。
キムシノ氏 「体内と体外を覆う膜状の組織である粘膜が、感染経路となります。特に、目、鼻、口、性器は外に出ている部分があるので、感染予防のためにはここの免疫力を上げることが欠かせません」。
目、鼻、口、性器の対策につき、キムシノ氏が教えてくれたことをまとめます。
目
外出時はゴーグルを着用し、目をこすらないように注意。帰宅したら、目専用の洗浄液で洗う。コンタクトレンズの長時間使用は、目の酸欠を招き、感染症も起こしやすくなるので気を付ける。
鼻
線毛細胞で守られているので、鼻は本来異物に強い器官。鼻毛を切りすぎないようにする、まめに鼻をかむ、鼻水をすすり込まないようにするなどの方法が有効。鼻粘膜の免疫力が発動しやすいように、鼻腔内が潤うよう、マスクや加湿をする。点鼻薬は市販品に頼りすぎず、必要なら耳鼻科医が処方するものを使うのが望ましい。
喉
帰宅時だけでなく、外出先でも「2時間に一回」など決めてうがいの習慣をつける。うがい薬は濃いほど良いというものではなく、適度な濃度。水だけでも十分。辛いもの、刺激物は喉の粘膜を痛めやすいので、ほどほどに。喉の粘膜の免疫力が発動しやすいよう、喉を潤す。口呼吸や大声を控える。マスクを使用し、加湿と最低1時間に一回、水を飲む。ハチミツを溶かしたお湯も有効。
性器
清潔を保つ。不特定多数との性交を控え、避妊をする。
一生役立つ感染症予防の基本
健康の基本は、「清潔を保つこと、免疫力を低下させないこと」だが、感染症が流行している時は、さらに強く意識し、実行することが重要。
キムシノ氏 「疲れを感じる前に休息し、良質で十分な睡眠を心がけましょう。栄養バランスの良い食事と、体温を上げ代謝を上げるために適度な運動は欠かせません。夜更かしや暴飲暴食は、免疫力の大敵なのでもってのほか」。
食事は家に閉じこもる間の、数少ない毎日の楽しみの一つ。良い食べ物と、悪い食べ物ってあるのでしょうか?
キムシノ氏 「にんにくやしょうがはスタミナ食として知られ、体を温める効果はありますが、摂りすぎると免疫力の80%を支える胃腸に負担をかけるので、ほどほどにしましょう。逆に、積極的に食べてほしいのは、胃腸の免疫機能を維持するために発酵食品や繊維質です」。
多くの有識者が勧めるうがいと手洗いも、正しい方法をこの機会に覚えましょう。
キムシノ氏 「帰宅時は、30秒以上のうがいをしましょう。手洗いは手首、指、指の間も含め、しっかり行います。部屋の換気、加湿、加温は有効です。ウイルスは低温、乾燥状態で安定的に存在するため、加湿、加温は必須。ワクチンがあるなら、重症化しないために予防接種しましょう。
エタノールでの消毒も効果はありますが、手洗い後にしっかり水分をふき取ってから。手に水分が残っているとエタノールが薄まり、効果が激減します。エタノールで手荒れが起きると、傷口から病原体が入りやすくなるので、保湿も忘れずに。
マスクはできればこまめに取り替えましょう。残り少ないなら、マスクの内側にガーゼを入れてそれを取り替えても良いです。外したマスクは放置しないように。捨てる時はポリ袋などで密閉しましょう。
いろいろ言いましたが、『コロナうつ』なんて言葉もある通り、心のパワーダウンは体の不調につながります。気を付けなければいけない中でも楽しみを追及し、体も心もいい状態を維持したいものです。自律神経を安定させることも免疫力アップにつながりますよ!」。
取材協力 :木村至信(きむら・しのぶ)
女医。信州大学医学部卒業後、横浜市大医学部大学院にて医学博士取得。産業医・横浜市の往診耳鼻科医。夏バテの予防策や美肌、美声などについての監修仕事多数。 医師の傍らシンガーとしても活動中。