若き挑戦者本田奎五段を3勝1敗で退ける。本田五段は参加1期目でのタイトル獲得ならず
将棋のタイトル戦、第45期棋王戦五番勝負第4局(主催:共同通信社)が3月17日に東京都渋谷区「東郷神社」で行われました。タイトル保持者の渡辺明棋王が2勝、挑戦者の本田奎五段が1勝で迎えた本局は、96手で渡辺棋王の勝利。タイトルを防衛し、棋王戦8連覇を達成しました。
第4局は本田五段が先手番。相掛かりを得意とする、本田五段の初手は当然の▲2六歩です。ここで渡辺棋王が第2局と同様に△8四歩として相掛かりを受けて立つのか、それとも△3四歩として回避するのかが早くも注目されました。初手から30秒ほど経過したのち、渡辺棋王が選択したのは△3四歩でした。
こう指されるともう相掛かりにはなりません。戦型は先手の矢倉対後手の雁木になりました。後手番での雁木は渡辺棋王が得意としている戦型のため、本田五段も想定内の形だったのでしょう。19手目に角を飛び出して相手の駒組みをけん制する、新手を披露しました。
序盤早々前例のない、構想力の問われる展開になり、両者小刻みに持ち時間を使いながら慎重に手を進めていきます。先に仕掛けたのは渡辺棋王でした。角交換を促し、角を飛車取りで敵陣に打ち込みます。本田五段は飛車を逃げずに強く応戦。飛車角交換に応じ、手にした角をすぐさま盤上の要所である5六に打ち据えました。
本田五段は打った角を馬にし、その馬を再び5六に引き付けます。角と馬が盤上の中央で四方八方ににらみを利かして大威張り。先手陣には隙がないように見えましたが、渡辺棋王には弱点が分かっていました。
それは先手玉側の端。△9四歩~△9五歩と伸ばしていったのが好判断でした。本田五段も馬の利きを生かして相手の桂頭を攻めましたが、後手の端攻めのほうが厳しく、ここで形勢に差がついたようです。端を突破し、飛車も成り込んで後手が優勢になりました。
敗れればタイトル戦が終わってしまう本田五段は、玉を逃がして必死に抵抗します。しかし、渡辺棋王の桂香を使った厳しい攻めが次々に突き刺さり、奮闘むなしく96手で投了となりました。
この勝利でシリーズ3勝目をあげた渡辺棋王はタイトル防衛に成功。棋王戦の連覇を8に伸ばしました。また、第4局で防衛を決めたことで、並行して行われている王将戦七番勝負の第7局一本に集中して臨むことができるようになりました。ダブル防衛戦を両方とも防衛するという最高の結果を残すことができるのでしょうか。第7局は3月25、26日に行われます。
一方、初のタイトル戦は残念な結果になってしまった本田五段。初参加棋戦でいきなりタイトル獲得という、とてつもない記録を達成することはできませんでした。しかし、得意戦法の相掛かりで戦った第2局は、棋界の第一人者の渡辺棋王に「完敗だった」と言わしめる内容での勝利。敗れはしたものの、今後ますますの活躍を予感させるようなシリーズでした。