キリンビールは3月17日、都内で国産ウイスキーの新ブランドを発表した。富士御殿場蒸溜所のグレーンウイスキー原酒のみを使用した「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」を4月21日より全国の飲食店で、どのような飲み方でも楽しめる濃口の国産ウイスキー「キリンウイスキー 陸」を5月19日より全国で発売する。

  • キリンウイスキーの新ブランド「陸」(左)と「富士」(右)

プレミアムブランド「富士」と手ごろな国産ウイスキー「陸」

キリンビールが新たに立ち上げる国産ウイスキーの新ブランドは、富士御殿場蒸留所を体現する「富士」と、ウイスキーの新しい価値を提案する「陸」の2つ。

プレミアムブランド「富士」は、世界で知名度が高く日本の象徴である富士山をストレートに表現したシングルグレーンウイスキー。フランスやアメリカなどの海外への展開も検討しており、世界規模での知名度アップを狙う。アルコール分46%、容量700mlで、参考価格は6,000円。まずは業務用として、全国の飲食店向けに出荷される。

  • 「キリン シングルグレーンウイスキー 富士」は4月21日から飲食店向けに出荷

キリンウイスキー「陸」は、色んな味わい方をカジュアルに楽しめるよう、どんな飲み方でも美味しさが実感できる中味設計を行った国産ウイスキー。同社は「うまさ“濃口”ウイスキー」と表現する。合わせて、ビールで培ったノウハウをもとに洋酒売り場の活性化を目指すという。アルコール分50%、容量500mlで、価格は1,500円。2020年5月19日から全国販売される。

  • 「キリンウイスキー 陸」は5月19日から全国販売を開始

キリンビール マーケティング部の根岸修一氏は「ウイスキーは自由だという思想を大事にしていきたい。そのうえでウイスキーの可能性を広げ、これまでになかったウイスキーの楽しさを伝えていく、これが我々の使命ではないかと考えています」とウイスキーにかける思いを語った。

1972 年に稼働した富士御殿場蒸溜所は、モルト、グレーンウイスキー原酒両方をつくることができ、さらにスコッチタイプ(ライト・グレーン)、カナディアンタイプ(ミディアム・グレーン)、アメリカンタイプ(ヘビー・グレーン)という3つの異なるグレーンウイスキーを製造している、世界的にもまれな蒸溜所だ。

大麦麦芽を発酵させ、単式蒸留器で作られるモルトウイスキーに対し、トウモロコシ、小麦、ライ麦などの穀物に麦芽を加えたものを発酵させ、連続式の蒸溜機で作られるのがグレーンウイスキー。富士御殿場蒸溜所のグレーンウイスキーは、ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)のグレーンウイスキー部門で、2016年を皮切りに3度世界一に輝いている。

「いままでは日本のお客様を中心に品質の高いウイスキーをお届けしてきましたが、これからはインバウンド需要、海外進出を含め、世界の人々に我々のウイスキーの良さを分かっていただけるような事業に成長していきたいと考えています」と梶尾氏は展望を述べる。

キリンビールのマスターブレンダー、田中城太氏は「我々が作っているそれぞれの原酒の良さを最大限活かすように仕上げたのが『富士』。富士御殿場のこれまでのグレーンウイスキーづくりを象徴するものなので、色々なニュアンスを色々な形で楽しんでいただけるように作り上げました」と語るとともに、「富士」と「陸」の試飲会を行った。

「富士」では、ストレートで味を確認しつつ、小指の第一関節くらいの小さな氷をグラスの中に1つ、2つと入れながら味わいや香りの変化を楽しんでいくという飲み方を紹介。「陸」では、薄い水割り(陸1:水10)や、濃い目のハイボール(陸1:ソーダ4)、お湯割り(陸1:お湯3)、オンザロックス(陸+氷+25秒)などさまざまな楽しみ方を紹介。「アルコール分50度なのは、いろいろな楽しみ方をしていただくため」と説明した。

  • キリンビールの根岸修一氏(左)、マスターブレンダーの田中城太氏(右)

富士御殿場蒸留所の見学ツアーもリニューアル

キリンビールは2019年2月に富士御殿場蒸留所に約80億円の設備投資を行うことを発表した。熟成庫能力の増強、発酵・蒸留設備の新設が予定されており、稼働時期は2021年6月を見込んでいる。

キリンディスティラリー 代表取締役社長 兼 御殿場工場長の梶尾氏は「この設備投資によって、世界一のグレーン原酒(3種)とモルト原酒の多様化によって、キリンウイスキーの世界を広げていくというのが我々の目指すところです」とする。

あわせて、富士御殿場蒸溜所を見学できるディスティラリーツアーのリニューアルも発表された。2020年初夏からは富士山展望エリアを、有料ツアー客および通常ツアー(午前中)客に開放、キリンの森での試飲が楽しめるようになるという。また2021年夏ごろを目指して、ディスティラリーツアー(エントランス・見学エリア等)全体のリニューアルを進める予定だ。