鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は11日、車輪とレールの間の摩擦を高めて滑りにくくするのと同時に摩耗を低減する車輪摩擦材「踏面調整子」を開発したと発表した。
鉄道の車輪には、つねにレールと接触する「踏面部」と、曲線部区間でレールと接触することにより脱輪を防ぐ「フランジ部」があり、踏面部は適度な粗さがあって滑りにくいこと(粘着性)、フランジ部は滑りやすく摩耗しにくいこと(潤滑性)が求められる。
これらの相反する性能を満たすため、現在は踏面部を研磨する「踏面研摩子」と、フランジ部に油を塗る装置の2つを用いている。今回開発された「踏面調整子」は、この2つの機能をひとつの装置で実現するために開発された。
この「踏面調整子」は、従来の「踏面研摩子」と同じ熱硬化性樹脂の基材を用い、研磨材と潤滑材を一体成型したもの。潤滑性能は、おもに二硫化モリブデンによって付与する。取付部の寸法や構造は従来の踏面研摩子と同じにして互換性を持たせた。摩耗する早さも従来と同程度で、交換周期も変わらない。従来のフランジ部に油を塗る装置は不要となる。
開発品の効果を確認するため、フランジ部の摩耗量が多い振子式特急車両で走行試験を行ったところ、従来品を搭載した車両に比べて摩耗率が約45%低いことがわかった。車輪とレールの摩擦を示す粘着性についても、従来品と同等の性能であることが確認できた。車両やレールのメンテナンス軽減につながる効果も期待できるという。現在、JR九州で営業運転している883系・885系の一部に試験的に搭載している。