マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、新型コロナウイルスの今後について語っていただきます。

  • 新型コロナウイルス、「未知の恐怖」から「既知の脅威」へ?


世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスが今後どうなるか。それは医療の素人が軽々に論じるべき問題ではないでしょう。ただ、エコノミストとしての希望的観測を述べたいと思います。

「コロナ禍」が過去のものとなる日はくるのか

世界中が懸念し、市場が大きく動揺しているのは、新型コロナウイルスに関して判らないことが多いからでしょう。潜伏期間や致死率、感染したり重篤化したりする条件などは必ずしも明確ではありません。ワクチンや特効薬は開発されておらず、治療方法も確立されていません。いわば、世界は「未知の恐怖」に怯えていると言えないでしょうか。

今後、データの収集や分析が進めば、さらに多くのことが分かってくるでしょう。ワクチンや特効薬が開発され、治療方法が確立されて、重篤や死亡に至るケースが激減するに越したことはありません。

しかし、そうでなくても、感染者数や死亡者数の推移が緩やかで、かつ高い確度で想定できるようになれば、それは「既知の脅威」であり、我々が社会・経済活動を行う上での「所与の前提条件」になるのではないでしょうか。例えは良くないかもしれませんが、交通事故のように。近年でも国内だけで毎年3,000人以上の方が交通事故で亡くなられています。交通事故を起こさないように心がけるのはもちろんですが、交通事故が怖いから旅行をしないという人はまずいないでしょう。

現在新型コロナウイルスの影響で、一斉休校やイベントの中止、あるいは会食・ビジネスランチの禁止などの対応により、我々の活動は大きな制約を受けています。しかし、2~3週間ならまだしも、長く続けられるはずはありません。感染を恐れるあまり、社会・経済活動が極端に萎縮すれば、貧困や失業の増大、企業の倒産、社会不安など多大なコストが発生することを認識すべきでしょう。

フラストレーションを溜めた消費者により、あるいは経営上の必要に迫られた企業により、そして教育の使命を負う学校により、見切り発車的に活動の正常化が始まるのではないでしょうか。その過程で状況に大きな変化(感染者の急増など)がなければ、正常化は粛々と進められるでしょう。また、その間に治療方法が確立されれば、「既知の脅威」ですらなくなるかもしれません。そうなれば「コロナ禍」は過去のものになるはずです。

楽観的すぎるとお叱りを受けるかもしれませんが、そのような希望を持ちたいと思います。