おいしいキャンペーンが続々登場するスマホ決済。お得感いっぱいだが、一方でセブンペイが不正利用でとん挫したのは記憶に新しい。セキュリティは大丈夫なのか? 始めるなら、どれを選べばいいのか? クレジットカードとの連携は? など疑問は尽きない。
そこで、『キャッシュレス生活、1年やってみた」(祥伝社)を出版した美崎栄一郎氏に本当のところを伺った。
スマホ決済のセキュリティは大丈夫?
まだまだ現金社会と言われる日本で、完全にキャッシュレス生活を送るのは難しいように感じる。実際に、1年間のキャッシュレス生活はどうだったのだろうか。
「地方だと苦労するように思うかもしれませんが、実はキャッシュレス還元のない住居面のコストが安いからおいしいのです。リアルな買い物で使える場所も、様々な業態で全国展開しているチェーンストアがあるので問題ありません」。
私自身は群馬県の高崎在住だが、確かにスマホ決済に対応している店舗は着実に増えているようだ。ただ、使うとなると、セブンペイの問題もあって躊躇してしまう現状がある。セキュリティ面は問題ないのだろうか。
「現状のクレジットカードより安全性は高いと言えます。カードだと、スキミングの心配があります。カード番号と裏面の3桁のセキュリティコードだけでネット決済ができてしまう現況で、店員にカードを渡すのは問題です。
しかしスマホ決済であれば、指紋などの生体認証で本人確認された環境で決済されるので安全。そこに、交通系ICカードのようにタッチ決済のクレジットカード機能をスマホに取り込んでいるのです」。
もう一つ気がかりなのは、パスワード管理の煩雑さ。何でもパスワードが必要になるので、リスクがあることを知っていながら、ついつい同じ番号を使い回してしまう。
「面倒だからと言ってパスワードを使い回すと、芋づる式に不正利用される危険があります。私はパスワード管理のアプリを使っています。月額3ドルで、管理アプリのパスワードひとつで安全に全てを管理できるようになります」。
月額3ドルを高いと見るか安いと見るか。300円ちょっとで安全が買えるなら、高くはないだろう。検討してみたい。
多種多様なスマホ決済、どこを選ぶべき?
セキュリティやパスワードの問題をクリアできたとして、次に問題になるのがスマホ決済の種類が多すぎること。どれを選べばいいのか、分からない人も多いのではないだろうか。
「現状でどこを選べばいいのかは、一概には言えません。スマホ決済の会社には、それぞれ特徴があるので、その人の暮らしている地域やどういったライフスタイルなのかによっておススメが変わってきます。一つ言えるのは、キャリア系なら、自分が使っているキャリアのスマホ決済を選ぶほうが特典が多くなっています」。
キャンペーンは一過性のもの。とりあえず、お得なキャンペーン期間だけ使ってみて、継続的に使うものは、ずっと同じサービスが期待できるポイントの還元率等で選ぶのが良さそうだ。
そのうえで、美崎氏は今後のスマホ決済市場の流れについて教えてくれた。
「様々な企業がスマホ決済に参入していますが、2018年12月に実施された『100億円あげちゃうキャンペーン』で、ペイペイの利用者が一挙に増えたことで、実はすうせいは決しています。スマホ決済のビジネスモデルから考えると、生き残れる企業は多くありません」。
確かに、スマホ決済を展開する企業の再編が急速に進んでいるようだ。ペイペイのソフトバンクグループが、Yahoo!とLINEを経営統合したほか、メルカリはオリガミペイを買収した。
最近は、NTTドコモやauもスマホ決済に参入している。しかし、これはQRコードを介した決済。便利とはいえ、いちいちQRコードを画面に呼び出す必要があるので手間だ。美崎氏は次のスマホ決済市場の潮目がここにあると言う。
「キャッシュレスによる支払い方法は、最後にはタッチ決済となるでしょう。それが一番楽だからです。実際、交通系ICカードを使ったタッチ決済で電車に乗れるとなったら、わざわざ切符を買う人は少数派となりました。
楽天はキャッシュレス決済時代に生き残ることができると私は考えていますが、その理由の一つは同社がSuicaというタッチ決済と提携したからです。ところが、ペイペイを率いるソフトバンクグループはタッチ決済できる仕組みがありません。そのため、ここで大きなうねりが起こるでしょう」。
2024年に日本はキャッシュレス社会に移行する
スマホ決済の普及で、もうひとつ気になっていたのはクレジットカードとの関係性だ。美崎氏は、著書の中で「メインとサブの2枚持ちから10枚持ちの時代へ」と書いている。
「カードをスマホに登録できるようになったので、持ち歩く必要がなりました。しかも、入会費、年会費とも無料のカードがほとんどなので、ポイントの還元率等に応じて使い分けるのがお得です」。
私も東京出張が多い関係で、Suica一体型クレジットカードのビューカードを持っている。このカードだと、Suicaへのクレジットチャージでポイントが3倍になり、かつ現在のキャッシュレス還元も受けられる。モバイルSuicaにすれば、カードを持ち歩くことも不要だ。
「スマートフォンのプラットフォームはグーグルとアップルが2強です。しかも前者は連携することにオープンで、各クレジットカード会社やSuicaなどなんでもOKのような姿勢です。
逆にアップルは真逆で、登録できるクレジットカードを制限するなど独自性を貫いています。この辺りのしのぎあいを注視すれば、クレジットカードを媒介とする大きなキャンペーンが見つかるでしょう。クレジットカードをうまく使って、特典を狙ってください」。
では、今後の日本のキャッシュレス化はどうなっていくのだろうか。
「2024年に新札を発行することが告知されています。そのタイミングで、日本は完全にキャッシュレス社会に移行するでしょう。現在あるATMや自動販売機全てを新札に対応させるには、莫大なコストがかかるからです」。
日本も近い将来、キャッシュレス社会となるのは避けられないようだ。最後に美崎氏から読者へのメッセージをいただいた。
「スマホ決済だと、使い過ぎが心配になるかもしれません。でも、毎日の暮らしがより便利でお得になるのは間違いありません。スマホにアプリをひとつ追加するくらいに思って、ぜひキャッシュレス生活を始めてみてください」。
取材協力:美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)
ビジネス書著者&講演家。花王でサラリーマン経験から、理論だけではなく、実際の現場での経験を元にした使えるノウハウをまとめ、伝えることが評価され、著作30冊以上。全国すべての都道府県で講演実績があり、その経歴から企業から職場内でセミナーも多い。