新番組『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年3月8日に第1話を放送)が早くも子どもたちの人気を集めている。キラメイジャーのヒーローキャラクター、および誕生の経緯はすでに映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO』(スーパー戦隊MOVIEパーティー)にて語られているが、テレビで放送された第1話は、4人のキラメイジャーに1人の高校生・熱田充瑠がキラメイレッドとして加わり、5人の仲間が揃うまでが描かれた。
『キラメイジャー』単独インタビューの今回は、本作で久々にチーフプロデューサーを務める塚田英明氏が登場。本作の企画の成り立ちや、フレッシュなキャストにまつわる楽しいエピソードを語ってもらった。
――塚田さんが「スーパー戦隊シリーズ」のチーフプロデューサーを務められるのは『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007年)以来久々ですね。東映の特撮作品としても『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)以来、およそ9年ぶりということになります。
そうですね。『仮面ライダーフォーゼ』以降は"大人もの"のテレビドラマを担当していましたが、もう一度"キャラクター作品"を直接手がけることになりました。若いプロデューサーたちには自分の現在の立場から「こういう"作り方"もあるよ」と方向性を示すことができたらいいな、と思っています。
――今回の『魔進戦隊キラメイジャー』の企画の成り立ちはどんな切り口から始まったのでしょう。
まず「宝石」と「乗り物」というモチーフが最初に決まりました。ふだんは宝石の形状をしていて、車やジェット機などの乗り物に変形するというコンセプトですね。クリヤパーツを使い、キラキラと輝く明るい雰囲気が出せたら面白いなと感じました。このキャラクターイメージを受け、ドラマのテーマを「輝いて生きる」と定めています。
企画書を作る際、現在どういう人たちが"輝いて"いるかを調べてみたんですが、ゴルファーの渋野日向子選手やお笑い"第7世代"と呼ばれる霜降り明星、アーティストではあいみょんとか、いまスポーツ界やテレビ界で大活躍している人の名前を並べているうちに、"若者の才能のきらめき"に着目するようになりました。
――キラメイジャーは見た目のキラキラだけではなく、現在いろいろな分野で才能を輝かせている若い世代のあふれる才能に重きを置いているのですね。そんな中、キラメイレッドの熱田充瑠だけはまだ才能を輝かせる前段階というか、可能性に満ちた高校生という設定なのはどのような意図がありますか。
いきなりキラキラの才能を押し付けても観る人が作品の中に入りづらいんじゃないか、と考えました。現在活躍している4人とは別に平凡な高校生のレッドを置くことで「僕も、私もキラキラになることができる!」と思ってもらいたかったんです。そもそも、最初からいきなりキラキラしている人なんて存在しないので。
――レッドが最年少で、何事においても未知数、それゆえに無限の可能性を秘める存在というのは、塚田さんが手がけられた『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)を想起させますね。
オーディションを行う際、僕たちスタッフ間でわかりやすい例として、漫画『花より男子』の「F4とつくしちゃん」が念頭にありました。それだけ、レッドと他の4人とは明確な"差"をつけたかったんです。
――充瑠を演じる小宮璃央さんをはじめと、決定したメインキャストのみなさんの印象について教えてください。
小宮くんは現在17歳で、現役の高校生なんです。彼の第一印象は、とにかくかわいいなと(笑)。今回、充瑠役を選考するにあたっては「最初から完成していない」という雰囲気を感じさせつつ「成長の幅」をも備えていないといけない、と思いました。一見頼りないんだけど、何かスイッチが入ると"やる気"になり、目標に向かって突っ走っていくというキャラクターです。ちょっと「大丈夫かな」と思わせつつ、何かをやってくれそうな"勢い"を小宮くんには感じています。
――木原瑠生さん演じるキラメイイエロー/射水為朝は「eスポーツ」の名手という設定に目新しさを覚えます。1月16日に行われた『キラメイジャー』制作発表記者会見の席で、木原さんが"大好きなヒーロー"だという『仮面ライダークウガ』(2000年)を熱く語る姿が、クールな外見とのギャップを感じさせ、印象的でした。
大人になってからの「特撮ヒーローが好き」みたいな話題は、昔ならTPOをわきまえてするものだったのですが(笑)、最近の若者は屈託なく口にしますし、それがごく自然なんですよね。そういうところも、新しい世代だなあと感じます。
――それは塚田さんをはじめとする作り手のみなさんが「スーパー戦隊」や「仮面ライダー」で良質な作品を作り続け、大人に成長しても忘れられないヒーローを生み出してきたからだと思います。
そうだとすれば、とてもありがたいことですね。
――水石亜飛夢さん演じるキラメイブルー/押切時雨役「イケメンアクション俳優」というのも、為朝のeスポーツに並んで今までにない設定ですね。
ブルーは剣技、イエローは射撃の達人ということから、剣の立ち回りを得意とするアクション俳優とeスポーツ(シューティングゲーム)の名手という"今風"の設定が生まれました。水石くんは実際に剣道をやっていて、古風な二枚目でメンバーの中では"落ち着いている"担当です。
――新條由芽さん演じるキラメイグリーン/速水瀬奈、工藤美桜さん演じるキラメイピンク/大治小夜と、ダブルヒロインの活躍にも期待が持てます。
「ヒロインは2人で」というのは、最初に僕が主張しておきました。明るく活発な瀬奈と、ちょっとフワフワした感じだけど頭の切れる小夜と、2人の個性分けにも注意しました。『キラメイジャー』のメイン監督を務める山口(恭平)くんは『仮面ライダーゴースト』(2015年)で(深海)カノンを演じていたときから工藤さんのことを「かわいいかわいい」と絶賛していて、メロメロだったそうです(笑)。新條さん、工藤さんそれぞれの魅力を打ち出していくことができれば、と思っています。
――新條さんといえば、瀬奈が陸上選手として短距離走を行う際のユニフォームに「scrth(スクラッチ)」というブランドロゴが確認できますが、これは、同じく塚田さんがプロデューサーを務められた『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007年)に出て来たスポーツメーカー「スクラッチ社」と同じものなのでしょうか。
美術の打ち合わせ時に「瀬奈は実業団の陸上選手だから、ユニフォームには会社名が必要になるよね」という話になり、だったらスクラッチでいいじゃないか、と僕が提案したら、さすがスタッフは"打てば響く"というか、『ゲキレン』の時のロゴをユニフォームに加えてくれたわけです。
インタビュー後半では、"魔進"という言葉がいかにして採用されたかの詳しいいきさつ、円熟したスタッフにまつわるエピソードを尋ねた。
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