丸山忠久九段は1位昇級。飯島栄治七段と田村康介七段は降級

3月11日に第78期順位戦B級2組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の第11回戦が東西の将棋会館で一斉に行われました。丸山忠久九段はすでに昇級を決めており、最後の昇級枠を懸けて7勝2敗の横山泰明七段と近藤誠也六段が争いました。

順位3位の横山七段は勝てば無条件で、負けても近藤六段が敗れれば昇級。順位21位の近藤六段は横山七段が敗れた上で自身が勝てば昇級です。

両者の対局のうち、先に終局したのが▲近藤六段-△中田宏樹八段戦でした。戦型は先後ともにがっちりと矢倉に組む、脇システムに。近藤六段が攻め、中田八段が受けるという対照的な展開になりました。攻めが切れる、それ即ち負け、という状況の中で近藤六段は見事に細い攻めをつなげていきます。最後は馬切りから流れるような寄せで、あっという間に中田玉を受けなしに追い込んでしまいました。これで近藤六段は昇級に望みをつなぎ、横山七段の結果を待つことになりました。

▲横山七段-△北浜健介八段戦は、北浜八段が得意のゴキゲン中飛車を採用。何度も大駒交換が行われる目まぐるしい中盤戦で、優位に立ったかのように思われた横山七段でしたが、北浜八段も馬を攻防に引き付けて反撃。北浜八段が王手竜取り、王手馬取りを連続でかけるド派手な展開を経て、形勢は混沌としていきます。

難解な形勢を抜け出したのは北浜八段でした。相手の角を攻めつつ、駒を自玉回りに結集させます。一時は孤立していた玉付近には、最終的に竜と金2枚が集まりました。

また、対抗形は玉が向かい合っているもの。自玉付近に集めた駒は、相手玉の頭を攻める駒にもなります。本譜も竜と金の力で玉頭から押しつぶすような攻めをさく裂させ、北浜八段が激闘を制しました。

この結果、8勝2敗の近藤六段が逆転でB級1組への昇級となり、同時に七段昇段も決めました。近藤六段は前期C級1組から昇級したばかりで、B級2組を1期抜け。順位戦参加4期でB級1組入りは異例のスピードです。また、順位戦の通算成績は34勝6敗の勝率8割5分と、圧倒的な成績を残しています。さらには順位戦で唯一、藤井聡太七段に黒星を付けた棋士でもあります。

また、丸山九段も最終戦を勝利し、有終の美を飾っています。こちらは途中8連勝を含む、9勝1敗という堂々たる成績。名人経験者が第76期以来のB級1組復帰です。

一方、降級点をめぐる戦いも熾烈でした。注目されたのは、ともに降級点を1つ持ち、敗れた方が確定でC級1組へ降級となる▲飯島栄治七段-△田村康介七段戦。この戦いを制したのは飯島七段でしたが、順位が悪く、まだ降級点回避は決まりません。

次々と他の対局が終わっていき、最後に残ったのは前述の▲横山七段-△北浜八段戦でした。実はこの対局、横山七段の昇級がかかっていただけではなく、北浜八段の降級点回避もかかっていた一戦だったのです。もし北浜八段が敗れれば、飯島七段は助かります。しかし、勝利すると降級点がつき、C級1組へと降級になってしまいます。結果は先の通り。1勝6敗から執念の3連勝をあげた飯島七段でしたが、朗報は届きませんでした。

来期は藤井七段が参入するB級2組。師匠の杉本昌隆八段と同級で昇級を争います。規定により直接対決は実現しませんが、この師弟がどのような活躍を見せるかも来期の注目ポイントの一つでしょう。

近藤六段は2期連続昇級
近藤六段は2期連続昇級