政府は新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐため、小中学校などに「臨時休校」するよう発表しました。しかし実際は、学校側の準備はできておらず、共働きの家庭も仕事を休めないなど問題は山積みです。
まだまだ混乱は続きそうですが、そんな時こそ大切なのが家族の絆。本稿では、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、休校中中の子どもとの関わり方についてアドバイスしてもらいます。
夏休みなど大型連休の場合は、親は事前に予定を組み、先生は課題を用意し、大人たちは過ごし方や心構えを準備することができます。しかし、今回は新型コロナウイルスの影響で突然1カ月もの臨時休校になったので、子どもはもちろん、親も学校も地域もそのための準備を整える時間が十分でないままの生活が始まりました。その結果、各所で見られる戸惑いや混乱……。こんな時こそ、家庭での親子の関わり方が大切です。どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。
子どもの気持ちを受け止める
お子さんの年齢や地域・学校の対応、親の働き方によっても各家庭を取り巻く状況は異なると思います。親も大変ですが、まずは、お子さんの気持ちを想像してみましょう。
突然の1カ月の休校に、当然親は大慌てでしょう。また、日々感染が広がっていく不安もあります。もしかしたら、「子どもに感染はしてほしくないし、自分もしたくない。だけど1カ月も休校なんてどうすればいいの?! 仕事も休めないし、困ったわ……」と、つい自分の戸惑いだけを言葉にしてしまっているかもしれません。
在宅ワークができるのか、夫婦で交代して子どもを見られるのか、学童やシッターさんの手配ができるのかなど不安は絶えません。しかし、子どもはそれ以上に、不安や嫌な気持ちを感じ取ってしまいます。
まずは、親も深呼吸をして、子どもの立場になって、子どもの気持ちを受け止めるようにしましょう。
「学校(幼稚園)が突然お休みになっちゃった」「友達と会えないのは寂しい」「練習した成果を発表できなかったのは悔しい」など、子どもの立場になって、その思いを受け止める時間をとるようにするといいと思います。
定期テストがなくなって喜んでいるお子さんもいれば、せっかく勉強したのにと悔しがっているお子さんもいます。親は無理に、どちらがいい・悪いと言わせるのではなく、子どもの思いを聞くことが大切なのです。
今の状況を子どもにわかるように話すこと
次に、なぜ臨時休校になったのか、今の状況を子どもの年齢に合わせて、わかるように話し、相談できるといいと思います。
今回の場合であれば、「新型コロナウィルスは、咳や菌を触った手で口や目を触ることでうつる可能性が高いことから、手洗い、うがいを丁寧にして、自分が感染したり、人にうつしたりしないように気をつけようね。症状が出ない人もいて、命の危険もあるから、気をつけないといけない。みんなで、我慢して乗りこえるために、休校になったのよ」といった具合にお話ししてみはいかがでしょうか。
子どもが手洗いうがいをしなかったり、暇だからとカラオケに行ったり、臨時休校の過ごし方や感染対策として良くない行動をしないよう、しっかり注意しましょう。話すときは、子どもの目線になるようしゃがんで、ゆっくり優しい声で伝えると、子どもも大切なことだと理解します。
お休み中のテーマを決める
せっかくの1カ月をどのように過ごすのか、前向きに考えられるように、子どもと相談しましょう。その際、親はイライラして「毎日ちゃんと勉強してよ」「外に出られないからって、ゲームばっかりしていたら体が鈍っちゃうよ」とマイナスな言葉をかけるのではなく、「突然もらった1カ月のお休みの予定を自分で好きなように作り上げられるなんて、素敵なことだよね。どんな風に過ごそうか」など、ワクワクすることが始まるような言葉かけをするように心がけましょう。
「クッキー作りを極める」「新しい自分を発見する」「新年度のお友達に配る名刺(自己紹介カード)を作ってみる」「You Tubeを1本作ってみる」「できなかった教科を復習する」「柔軟な体作りをする」「検定をとる」など、子どもが自分で決めて、紙やノートに書くことがポイントです。
そしてこの時、親も自分のやるべきテーマを書き出すようにしましょう。子どもだけにやらせるより、家族全員がそれぞれ考えて実行することが大切です。子どもは、親が目標を立てて、実行する姿を見て学ぶからです。
時間割表を作り、子どもの組み立てる力を育てる
テーマ(目標)を決めたら、それを実現するためにすべきことを書き出しましょう。「クッキー作りを極める」なら、どんなクッキーを作りたいのかなどを調べます。時間を潰すために何かをさせるのではなく、あくまで子どもが自分で考えて取り組み、形にしていくことを学ぶ1カ月にしたいですね。
そして、それに取り組むための時間割表を作りましょう。大きな画用紙に、縦軸に時間、横軸を曜日にして、起床時間、寝る時間、ご飯やお風呂など生活の時間を入れていきます。テーマに沿ったやるべきことを入れて、残りの時間は、宿題やお稽古事など、色分けして見やすく作りましょう。
大事なことは、立派な時間割表を完成させることではなく、子どもが時間の感覚を学ぶことなので、何度でも作り直しましょう。お風呂を10分に設定しても、実際に測ったら30分かかったなど、自分でわかることが大切です。アナログ時計を使って、長い針の動いた時間を見ると、わかりやすいですよ。
親も在宅ワークの場合は、子どもの時間割表を尊重して生活リズムを作れるので、お互いに自分のすべきことに集中しやすくなります。
漫然と言われる親からの「勉強しなさい」「ドリルやってね」といった言葉では、子どもはやる気にはなりません。子どもが自分で決めて、目標と役割が見えると、張り切って取り組むようになっていきます。
この大変な時期を、体調管理はもちろん、親子で学びの深い時間にできるといいなと思います。