永瀬二冠はリーグ戦2連勝。敗れた豊島将之竜王・名人は序盤に誤算あり

木村一基王位への挑戦者を決める、第61期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(主催:新聞三社連合)の▲永瀬拓矢二冠-△豊島将之竜王・名人戦が3月4日に関西将棋会館で行われました。両者1勝0敗で、連勝をかけた一戦は、永瀬二冠が169手で勝利を収めました。

角換わり調の出だしから、先手の永瀬二冠が角道を閉じて角換わりを拒否。豊島竜王・名人は雁木に、永瀬二冠は矢倉に組みました。

豊島竜王・名人は永瀬二冠の棒銀を警戒して、3三金・3二玉型という見慣れない形に組み、仕掛けを与えない方針を採用しました。それに対して永瀬二冠は一度3七に上がった銀を▲4八銀と引きます。これが柔軟な対応でした。3七に桂を跳ねれば将来金取りに桂を跳ねる手がありますし、銀を自玉に引き付けてさらに固めることもできます。

豊島竜王・名人は相手の仕掛けを封じることには成功しましたが、自ら動く順もなくしてしまったのが誤算だったようです。やむを得ず玉を固めて待機しましたが、永瀬二冠も先ほど引いた銀を矢倉に合体させ、金銀4枚の強固な囲いを構築することに成功しました。

一向に動くことのできない豊島竜王・名人は、飛車や玉を反復運動させて千日手を狙います。しかし、主導権を握っている永瀬二冠が千日手で妥協するわけがありません。万全の形を組み上げてついに打開。駒が初めてぶつかり、駒台に乗ったのは実に75手目でした。

駒組み合戦で作戦勝ちとなった永瀬二冠は、戦いが始まると金得という実利を得て、さらに優位を拡大します。豊島竜王・名人の反撃を受けて、自玉が自陣から引きずり出されましたが、それを逆用して中段に要塞を構築。入玉をほぼ確定させ、あとは豊島玉を寄せるだけです。

永瀬玉が全く寄らなくなってしまったため、豊島竜王・名人は自らも入玉することに一縷の望みを託します。しかし、そこで無理に玉を捕まえようとせず、飛車に狙いを付けたのが永瀬二冠の好着想でした。仮に相入玉になったとしても、5点の飛車を取ってしまえば点数が24点に届かないだろうという読みです。

結局飛車が助からなくなった局面で豊島竜王・名人の投了となりました。手数は169手。長い戦いでしたが、終始永瀬二冠がリードしており、完勝と言える内容でした。

リーグ成績は永瀬二冠が2勝0敗、豊島竜王・名人は1勝1敗となりました。全5回戦の王位リーグはまだ始まったばかりですが、タイトル保持者同士の戦いを制した永瀬二冠が一歩も二歩も抜け出した印象です。

叡王戦の防衛戦でも戦う相手に完勝した永瀬二冠
叡王戦の防衛戦でも戦う相手に完勝した永瀬二冠