藤井七段の順位戦通算成績は驚異の29勝1敗! 及川拓馬六段、石井健太郎五段は順位差で届かず

3月3日に第78期順位戦C級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の10回戦が、東西の将棋会館で一斉に行われました。すでに昇級を決めていた藤井聡太七段は、最終局も勝利して10連勝。昇級に花を添えました。また、残り1つの昇級枠を射止めたのは佐々木勇気七段でした。

藤井七段は真田圭一八段との対戦。ともに矢倉にがっちりと囲う、じっくりとした戦いになりました。藤井七段は8筋に、真田八段は4筋に桂を跳ね、矢倉囲いに襲い掛かります。

真田八段が先に桂交換を果たし、敵陣に楔の歩を打ち込んで好調に攻めているように見えましたが、藤井七段の攻め駒を責める桂打ちが好手でした。この桂の利きで飛車取りにと金を作ることに成功。リードを奪いました。

このと金が縦横無尽に敵陣を駆け回る活躍を見せます。自陣の飛車を取らせている間に、と金で角を入手。最終的には矢倉の金もはがしてお役御免。勝勢を築き上げるには十分な働きでした。

最後は自玉に詰めろがかかりましたが、もちろん藤井七段は読み切っています。真田玉を即詰みに打ち取り、しっかりと一手差で勝利を収めました。

これで全勝でB級2組へ昇級することになった藤井七段。これまで3期順位戦を戦って、成績は驚異の29勝1敗です。もはや1勝を積み上げても勝率はほとんど変わらず、本局を制したことで勝率は9割6分6厘から9割6分7厘になりました。

また、先はかなり長いですが、この後B級2組、B級1組を1期で昇級し、さらにはA級でも1期で優勝すれば、谷川浩司九段が持つ最年少名人獲得記録を更新することができます。谷川九段の記録は21歳2カ月。名人戦は例年6月には決着がつくので、7月19日が誕生日の藤井七段は20歳の名人となる可能性が残されています。戦う相手はクラスが上がるにつれてますます強くなっていきますが、藤井七段も実力をさらに伸ばしていくことでしょう。この驚異的な勝率を見ると、夢物語とも言えないのではないでしょうか。

最後の昇級枠を巡る戦いは、3人に絞られていました。順位がいい順に佐々木七段、及川拓馬六段、石井健太郎五段です。

まず決着がついたのが及川六段-高崎一生六段戦でした。高崎六段の三間飛車に対して及川六段は穴熊に組みます。高崎六段も美濃から穴熊に組み換えようとしますが、手の遅れが響いて及川六段が作戦勝ちに。中盤で形勢を損ねてしまったものの、最後は相手の時間切迫にも助けられ、再逆転で及川六段が激戦を制しました。これで及川六段は佐々木七段が敗れれば昇級のキャンセル待ちに。石井五段の昇級はなくなりました。

しかし、そのわずか4分後に佐々木七段-宮田敦史七段戦が、佐々木七段勝ちで決着しました。矢倉の出だしから、後手の佐々木七段が横歩を取らせる形に誘導。近年実戦例が増えている手法で、力戦形となりました。

難しい形勢のなか、佐々木七段が放った攻防の香が好手でした。攻めては敵玉のこびんをにらみ、受けては将来飛車を成り込まれた際に、あらかじめ防波堤の役割を果たす一石二鳥の手。これで局面が分かりやすくなって、佐々木七段が良くなりました。

終盤は激しい寄せ合いとなりましたが、この香が最後の最後に活躍。敵陣に成り込んで、玉を追い詰めたところで宮田七段が投了となりました。

第70期から順位戦に参加している佐々木七段は、第72期にC級2組で昇級。C級1組に入っても、常に昇級候補と見られていましたがここで足踏みをしてしまっていました。6期目にして嬉しい昇級です。

昇級の目がなくなってしまっていた石井五段は、西尾明七段に勝利し、1敗をキープ。前期は9勝1敗で藤井七段と船江恒平六段が昇級できませんでしたが、今期も及川六段と石井五段が順位の差に泣く結果となりました。

最年少名人となる可能性がある藤井七段
最年少名人となる可能性がある藤井七段