ついに料金プランを発表し、「第4のキャリア」として通信事業を正式スタートする楽天モバイル。料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」(アンリミット)は、月額2,980円(税抜き、以下同)という、キャリアとしては異例の安さでデータ使い放題、しかも300万名に限り1年間料金無料で使えることが特徴です。しかしエリアの状況や収益についてなど、疑問点も残ります。3日に開催された発表会で、メディア向けに行われた質疑応答の内容をまとめました。
不公平な価格設定では?
質疑応答には、楽天モバイル 代表取締役社長の山田善久氏、楽天モバイル CFOの廣瀬研二氏が対応しました。
楽天モバイルのエリア外に住んでいるユーザーにはメリットが少なく、不公平な価格設定ではないか、との指摘に山田氏は「プレゼンで説明した通り、総務省に提出した計画を上廻るペースで基地局の建設を進めています。自社回線を増やすことで、お客様には自由な、データの上限を感じない世界を体感いただきたい。何年後、とは明確にできませんが、できるだけ早く設備を整えられるように、一丸となって基地局の建設に邁進していきます」と回答しました。
「常識をくつがえす」のはどの部分?
UN-LIMITプランの狙い、そしてどのあたりが常識をくつがえす部分なのか、と聞かれると「世界各国の状況と比較すると、日本はインフラが整備されていながらも、ユーザーのデータ使用量が少ないことが分かります。そこで、データの上限を気にせずに自由に使えるサービスを提供していきたかった。世界の主要キャリアの中でも珍しい、ワンプランのシンプルな使い放題の料金プランで、300万人は1年目が無料となる、衝撃的な価格にしました」と山田氏。
サービスを利用できる端末について聞かれると「できるだけ、色んな端末が対応するようにしていきます。メーカーにも、そうお願いしているところ。いま11機種ありますが、これを広げていきます」(山田氏)。
つながっているのは楽天エリア? auエリア?
現在の仕様では、楽天のネットワークにつながっているのかKDDI(au)のローミングなのか、ピクト表示で見分けることができない、という指摘に山田氏は「現在は分からない仕様ですが、4月8日のサービス開始後は、マイ楽天モバイルのアプリ上で確認できるようになります」と回答。
ただ、ユーザーがどちらでつなぐか任意に選択はできないとのことでした。楽天モバイルのMNO参入により携帯電話市場は変わるのか、と聞かれると山田氏は「他社さんがどう出るかは分かりません。我々は、モバイル業界が活性化するお役に立ちたい、という気持ちでやっている。良いサービスを安い価格で、データ上限を気にしないで利用できる世界を実現したい」。
料金プランが月額2,980円に落ち着いた理由については「経緯は複雑です。色んな選択肢がありました。他社さんの価格も参考にしつつ、最後は総合的な判断で決まりました。インフラを担う会社として、ユーザーさんに喜んでもらえるよう、その基盤がくずれないようにとの考えです。これしかない、というところに落ち着いたと思っています」。
先行投資で赤字スタート、エリアの充実が鍵
MVNOからMNOになる楽天モバイル。現在、230万人を擁するMVNO利用者の巻き取りについては「MVNOとしてのサービスは4月7日に新規受付を終了し、8日からMNOサービスへの移行手続きを開始します。手続きはWeb、店舗で行えます。ただ、MVNOとしてのサービスも当面は継続する予定です。できるだけ早く、皆様にMVNOからMNOに移ってもらえたらとは思いますが、ご迷惑がかからない充分な期間をとります」と回答。
どこかのタイミングで回線を切り替えていきますが、皆様の移行のスピードにも依るので時期は明言できない、と繰り返しました。
収益化について問われると、楽天モバイル CFOの廣瀬研二氏は「1年目は300万名が無料になります。これも踏まえてARPUを計算しています。契約者数の獲得スピードが変動要素で、これが(基地局の建設スピードよりも)早ければローミングが増えていく(つまり赤字が増える)。そのあたりをシミュレーションしています。ほぼ3年程度で、黒字化できるのではないかと思っています」との見方を示しました。今期の業績への影響については「先行投資で相応の赤字になります。既存事業、その他の事業でカバーできるよう、しっかりやっていきたい」と廣瀬氏。
どんなユーザーをターゲットにしているのか、という問いに山田氏は「楽天のサービス自体がそうなんですが、特定層を狙うよりも幅広い方々に利用してもらいたい。料金も安いので、大容量をお使いの人にも、そうでない人にも新しい世界を体験してもらえたら」と話しました。