三井化学は3日、福岡県の大牟田工場で原材料の搬入等に使用している三井化学専用線(旧三池炭鉱専用鉄道)を2020年5月をめどに廃止するとともに、三池炭鉱の時代から現在に至るまで100年以上の長きにわたり活躍を続けてきた炭鉱電車への感謝と、未来に向けたレガシーとしての活用を検討する「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」を開始すると発表した。

  • 三井化学が「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」を開始する

旧三池炭鉱専用鉄道は、1878(明治11)年に三池炭鉱の大浦坑から石炭を搬出するために敷設された馬車鉄道が歴史の始まり。1891(明治24)年に蒸気機関車の運転が開始され、1908(明治41)年に三池港が開港すると、石炭輸出の増大とともに1909(明治42)年から電化を開始し、電車が走り始めた。

支線を含む総延長は約18.5kmに及び、1964(昭和39)年から1972(昭和48)年までは地方鉄道として、旅客の輸送も担っていた。大牟田の風景として、町の人たちからは「炭鉱電車」の愛称で親しまれ、1997(平成9)年の三井三池炭鉱の閉山とともに、その多くの路線は廃止されたものの、一部区間(1.8km)は三井化学専用線として、当時の車両とともに運行を継続してきた。また、三池炭鉱専用鉄道敷跡は「明治日本の産業革命遺産」として、2015(平成27)年に世界文化遺産に登録されている。

「ありがとう炭鉱電車プロジェクト」では、現在、三井化学専用線で使用中の、日本で稼働する最古級の電気機関車といわれている1915(大正4)年三菱造船製の炭鉱電車のメモリアル映像を製作。2019年公開の映画『いのちスケッチ』などを製作した映画監督の瀬木直貴氏に製作を依頼し、これまでの歴史を振り返りつつ、現在も現役で稼働している様子を映像に収め、完成した映像を大牟田市や関係団体へ寄付・提供する。

さらに、炭鉱電車が発する「音」を記録として残すため、炭鉱電車にまつわる音をASMR音源としてアーカイブする。音源は誰でも聞くことができ、ミュージシャンもサンプリングとして無償で使用できるように、QUANTUMとオトバンクが手がけるブランデッド・オーディオレーベル「SOUNDS GOOD」とコラボレーションして公開する。Seiho(セイホー)氏による炭鉱電車の音源を活用した楽曲の制作も予定している。

2020年6月をめどに、瀬木監督によるメモリアル映像の完成披露試写会と合わせ、ラストランイベントも開催する予定。車両の近くで写真撮影などできる機会を用意するため、イベント期間外での一般見学は行われない。完成披露試写会やラストランイベントの内容・日時等は詳細が決まり次第、三井化学のウェブサイトにて告知される。

炭鉱電車の今後としては、現在も現役で稼働している5台(20t車両3台・45t車両2台)と、それらに付随する各車両、駅舎等の取扱いに関して、現時点では未定であり、これから広く引き取りの希望などを聞き、協議のうえで決定していくとのこと。