外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2020年2月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 2月の推移】
2月のドル/円相場は107.512~112.222円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約0.3%下落(ドル安・円高)した。市場の関心が新型コロナウイルスに集中する中、上中旬は決め手を欠き109円台を中心にもみ合った。
ところが、19日に明確な材料がないまま動意付くと20日には約10カ月ぶりに112.222円まで急伸。新型コロナウイルスを巡り、日本で感染拡大の懸念が高まった一方、米国には影響が小さいとの見方から円安・ドル高に振れた。
しかし、ウイルスの感染がイランやイタリアにも広がり始めると、東アジアだけのリスクではなく世界レベルの脅威になるとの見方から世界中で株価が下落。米長期金利にも急激かつ大幅な低下圧力がかかったため、円高・ドル安へと流れが転換した。
その後、南米やアフリカなどへも新型コロナウイルスの感染が拡大する中、世界保健機関(WHO)が世界的危険度を最高レベルの「非常に高い」に引き上げた28日には、一時107.512円まで下値を切り下げて約4カ月半ぶりの安値を付けた。
【ドル/円3月の見通し】
中国に端を発した新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、経済活動の停滞懸念が強まり、2月後半には世界中で株価の下落が進んだ。2月最終週だけでNYダウ平均は3,500ドル超下落、日経平均も2,200円超、独DAX指数は1,600ポイント超下落した。
こうした中、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に利下げに動くとの観測が高まっており、FEDウォッチによると市場は3月18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25bpではなく50bpの利下げが行われる確率を100%織り込んだ。その他、FRBは18日のFOMCを待たずに緊急利下げに動くとの見方も出ている。また、一部には他の主要中銀も協調して金融緩和に動くとの観測もある。まずは、こうした金融政策面でのウイルス対策が注目される。同時に、金融緩和によって市場心理の悪化に歯止めがかかるか注目したい。
米国の利下げ自体はドル安要因となるが、世界の株価が持ち直すようなら円安要因にもなり得る。もちろん、金融政策でウイルスの感染拡大が止められるわけではない。各国の感染拡大防止に向けた取り組みが重要になるのは言うまでもないだろう。
その他、新型ウイルスに隠れて注目度が低下しているが、佳境に入りつつある米大統領選の候補者選びにも注目したい。米民主党では中道派のブティジェッジ候補が選挙戦からの撤退を表明。3日のスーパーチューズデー(カリフォルニアやテキサスなど14州で予備選挙)からは、中道派のブルームバーグ前NY市長が本格参戦する。序盤戦をリードする左派のサンダース氏、中道派のバイデン氏にブルームバーグ氏を加えた三つ巴の戦い(急進左派のウォーレン氏も加わる可能性)が注目される。
なお、左派=リベラル派の大統領候補に対する市場の嫌悪は根強く、スーパーチューズデー後もサンダース氏がリードを維持するようなら米株安・ドル安が加速する可能性も捨てきれない。