昭和の映画やテレビドラマなどでは、オフィス内や公共機関で平然とタバコ吸う―― というシーンを見かけた。現在の価値観では、会社のデスクでタバコを吸うなんて信じられないだろう。そんな昭和から、元号は2度も変わり、時は令和の時代。分煙化は年々進み、4月からはいよいよ改正健康増進法が施行される。

今回の法改正では、受動喫煙防止の観点から「屋内は原則的に禁煙」というルール変更がなされる。マイナビニュースの別稿では、飲食店のルールと例外を紹介した。本稿では、オフィスや学校、病院、学校などでのルールを紹介していく。

■オフィスでタバコが吸いたい場合は?

まずは職場でのケースから見てみよう。すでに独自の分煙ルールを設けているオフィスがほとんどだと思われるが、改正健康増進法が施行される4月以降は、厳格なルールに統一される。

  • 【ルール】オフィス内は原則的に禁煙。喫煙禁止場所での喫煙や喫煙器具、灰皿などの設置は罰則対象となる

屋内でタバコが吸えなくなるだけでなく、施設管理者に対して灰皿の設置も禁じているあたり、なかなか厳しい。罰則は最大で50万円以下の罰金になるので、「ま、いっか」は通じない。さて、オフィスでの例外はどうか。

■【例外】「喫煙専用室」または「加熱式タバコ専用喫煙室」でタバコを吸うことができる

オフィスも飲食店と同様、喫煙専用室を設けることで屋内喫煙が例外的に認められる。「喫煙専用室」では紙タバコと加熱式タバコが吸えるが、「加熱式タバコ専用喫煙室」では紙タバコは吸えず、加熱式タバコのみが吸えることになる。

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    「喫煙専用室」と「加熱式タバコ専用喫煙室」に設置される標識

喫煙専用室」と「加熱式タバコ専用喫煙室」にはきちんとした定義が設けられるので、これまでなんとなしに空きスペースを喫煙所としていたオフィスなどは対策が迫られることになる。「喫煙専用室」の条件は以下のとおりだ。

■「喫煙専用室」「加熱式タバコ専用喫煙室」の条件

  • (1)煙が流出しないよう、床面から天井まで壁で仕切られた独立した部屋であること。
  • (2)タバコの煙が屋外などに排気される設備の設置し、排気先にも悪影響がないこと。
  • (3)空気がきちんと循環されるよう、室外から室内に流入する空気の気流が0.2毎秒以上であること……など。

ちなみに、今後も屋外に喫煙所を設置することはできる。これは"例外"というよりも、オフィスなどの場合、屋外は規制の対象外となっているためだ。

ただし、その場合も非喫煙者が近くを通らなくても済むよう、建物の出入口からなるべく離れたところに設置し、近隣に迷惑がかからないような配慮が求められているので、副流煙が周囲の迷惑にならないよう、喫煙者は常に気を配ろう。

また、ショッピングセンターや劇場、博物館、集会所、娯楽施設などといった「多数の人が利用する施設」は、いずれもオフィスと同じ条件が当てはまるが、ホテルなどの宿泊施設の客室は、改正健康増進法の適用除外のため、これまでどおり禁煙と喫煙の部屋を客が選ぶことができる。

■学校や病院でタバコが吸いたい場合は?

学校や病院、児童福祉施設、そして行政機関の庁舎などは「第一種施設」に分類される。これら施設はオフィスよりも厳しいルールが適用される。これらの施設は4月の改正健康増進法の本格施行に先駆け、2019年7月から先行して改正法が適用されていた。では、どんなルールなのか。

  • 【ルール】屋内は全面的に禁煙で、「喫煙専用室」などの設置も認められない。喫煙禁止場所での喫煙器具、設備などの設置も禁止

オフィスなどと違い、屋内における喫煙スペースの設置は例外さえ認められないというのが第一種施設である。よって、病院内などで喫煙所を探しても無駄だということは肝に命じておこう。愛煙家にとって非常に厳しい変更だが、屋外ならギリギリ例外が用意されている。

  • 【例外】「受動喫煙を防止するための必要な措置がとられた屋外」にのみ、特定の喫煙場所を設置することができる。
  • その場所が特定屋外喫煙場所であることを示す標識

つまり、一定の条件を満たすことで、屋外にはまだ喫煙所を設置できるというわけだ。その条件は次の通りだ。

■「特定屋外喫煙場所」の条件

  • (1)喫煙場所と非喫煙場所が区画されていること。
  • (2)喫煙場所であることを明記した標識を掲示すること。
  • (3)施設の利用者が通常立ち入らない場所に設置すること。

(3)は建物の出入り口の前ではなく、建物の裏や屋上などを指す。ただし、東京都の条例では小学校、中学校、高等学校、保育所、幼稚園など、教育施設は屋外であっても喫煙所の設置を認めていないので、地方自治体によってケース・バイ・ケースということになりそうだ。

■【例外の例外】フロア別にタバコを吸える店もある?

最後に、これは例外中の例外ということになりそうだが、飲食店や娯楽施設などでは、店が2フロア以上ある場合、こんな例外も設けられている。

*【例外】階数が複数ある店舗では、2階以上のフロア全体を「喫煙室」とみなすことができる。ただし、加熱式タバコに限る。

フロア全体を喫煙スペースとみなす、「フロア分煙」である。条件は各階層が壁や天井などで完全に仕切られていること。吹き抜けに階段が設置されている場合はフロアを仕切れていないので、フロア分煙の対象にはならない。基本的に、店の外階段やエレベーター等を使って階層を移動する構造の場合が対象になるというわけだ。

そういう店はあまり多くはないが、居酒屋やパチンコ店などでは時々見かけることもあるので、行きつけの店がどうかは各自チェックを。ちなみに、フロア分煙も紙巻きタバコはNG。加熱式タバコに限る点にはご注意を。


以上、オフィスや学校、病院、学校などでのルールを紹介してきた。ルールも例外も複雑で、すぐに覚えるのは難しいかもしれないが、まだ完全禁煙というわけでもないことはわかったはずだ。喫煙者も非喫煙者も気持ちよく生活できるよう、これからもルールに則った喫煙マナーを守っていこう。

参考:厚生労働省Webサイト「なくそう!望まない受動喫煙。