来期からA級棋士の斎藤慎太郎八段を相手に、角換わりで完勝
渡辺明棋聖への挑戦者を決める、第91期ヒューリック杯棋聖戦決勝トーナメント(主催:産経新聞社)の1回戦、▲藤井聡太七段-△斎藤慎太郎八段戦が2月29日に関西将棋会館で行われました。決勝トーナメントの開幕局となった本局は、藤井七段が93手で勝利。タイトル挑戦まであと3勝としました。
振り駒で先手になった藤井七段は、得意の角換わりを採用します。角換わりは斎藤八段も得意とするところ。避けることはしません。
歩がぶつかるところまでは猛スピードで進行するのが、近年の角換わり腰掛け銀の特徴です。本局も仕掛けまではほぼノータイム、戦いが始まってからは長考合戦となりました。藤井七段が攻めをつなげられるのか、それとも斎藤八段が攻めを受け止め、反撃に転じられるのか、トップ棋士同士の読みと読みがぶつかります。
難解な局面を抜け出したのは藤井七段でした。銀桂交換の駒得を果たした上に後手玉を露出させることに成功します。
斎藤八段も簡単には土俵を割らない粘りの姿勢を見せます。自玉付近に馬を作り、その馬の利きを生かして、飛車取りにと金を作りました。ここで飛車が逃げてくれれば逆転もあるのですが……。もちろん藤井七段がそんなぬるい手を指すわけがありませんでした。
まずは王手で銀を打ち、次に逃げ道を封鎖する角を打って、あっという間に斎藤玉の包囲網が完成。斎藤八段も何とか玉を逃げ出そうと頑張りましたが、93手目の桂打ちで投了となりました。この桂打ちは飛車の利きを生かした好手。と金に取られそうだった飛車が最後に寄せに働く見事な手順でした。
これで藤井七段は2回戦進出。次局は行方尚史九段-菅井竜也八段戦の勝者と対局します。また、タイトル挑戦まであと3勝となりました。我々観戦者は藤井七段の打ち立てようとする記録に注目してしまいますが、当の本人は違います。
記録の更新に関して、無関心を貫く藤井七段。この棋聖戦はタイトル挑戦の最年少記録更新のラストチャンスとなりますが、この姿勢は変わりません。局後のインタビューでそのことについて問われても、「まだ挑戦を意識する段階ではありません。目の前の盤上に集中したい」と答えています。