どこもかしこも禁煙、禁煙、禁煙。愛煙家の肩身は年々狭くなるばかり。そこにきて、4月1日から施行される「改正健康増進法」である。法改正の趣旨は「望まない受動喫煙を防ぐ」というもので、漠然と「禁煙エリアが爆発的に増えるんだろう」と受け止めている人も多いはずだ。

そこで本稿では、喫煙者もそうでない人もハッピーなライフスタイルを送れるよう、この春から始まる新たな喫煙ルールについて解説したい。

ちなみに、違反して喫煙した場合は30万円の罰金もありえるので、特に愛煙家は必読。まずは「飲食店でのルール」について解説していく。

■飲食店でもタバコが吸えなくなる? ルールと例外を紹介

コーヒーやお酒と一緒に嗜むタバコは格別に美味い。それは法律が変わるからといって変わることはない普遍的な事実。だからこそ4月以降、タバコがどこの店で吸えて、どの店では吸えなくなるのかは、愛煙家にとって死活問題である。まず、改正健康増進法の大前提となるルールを確認したい。

  • 【ルール】 2020年4月1日からは、原則として屋内は禁煙

すでに分煙化は進んでいたが、基本的には「いよいよ屋内ではタバコが吸なくなる」と認識しておくべきである。屋内での喫煙はすべてが"例外的"なケースなのだ。肝心なのは、「じゃあ、どんな例外があるの? 」ということである。

  • 2020年4月から屋内全面禁煙化! 吸っていい店・ダメな店の見分け方

    喫煙スペースを設ける場合には標識を店頭に掲示することが義務づけられる。画像は標識の一例

■【例外その1】大型店舗や大手飲食店、新店舗の場合

  • 「喫煙専用室」、または「加熱式タバコ専用喫煙室」でタバコを吸うことができる。

これは喫煙専用のスペースを設けることで屋内でも喫煙ができる、というケースだ。

ここで言う大型店舗とは「客席面積が100平米を超える広い居酒屋」などのこと。大手飲食店とは「資本金5000万円超の会社が経営する飲食店」のことで、これは主に有名チェーン店などが当てはまる。そして新店舗とは、4月1日以降に新しくオープンするすべてのお店を指す。

ここで該当する店は、例外として「喫煙専用室」と「加熱式タバコ専用喫煙室」の設置が認められるのだが、そこにも細かい定義があるのだ。

■「喫煙専用室」とは?

  • 「喫煙専用室」を設置している大型店などは、この標識が目安となる

喫煙専用室」をわかりやすく説明すると、空港や大型ショッピングセンターなどで見かける、「外に煙が漏れないドア付きの部屋」のようなものをイメージすればいい。「喫煙専用室」では紙巻きタバコも加熱式タバコもOKだが、飲食はNG。

■「加熱式タバコ専用喫煙室」とは?

加熱式タバコ専用喫煙室」では、加熱式タバコのみを吸うことができ、紙巻きタバコはNG。そして、こちらでは喫煙しながら食べ物や飲み物なども同時に楽しめる。

  • 「加熱式タバコ専用喫煙室」設置店の標識には、見慣れない加熱式タバコのイラストが登場

例えば現在、コーヒーショップなどで喫煙エリアが設けられている店があるが、今後はそういった場所で加熱式タバコのみがOKになる、というイメージだ。飲食不可な「喫煙専用室」とは違い、「加熱式タバコ専用喫煙室」は、椅子やテーブルが置いてあるような広めのスペースであることが期待できる。

ただし、「喫煙専用室」も「加熱式タバコ専用喫煙室」も、外部に煙が流出しないよう、以下にある一定の条件が満たされなければならない。

■「喫煙専用室」「加熱式タバコ専用喫煙室」の条件

  • (1) 煙が流出しないよう、床面から天井まで壁で仕切られた独立した部屋であること。
  • (2) タバコの煙が屋外などに排気される設備の設置し、排気先にも悪影響がないこと。
  • (3) 空気がきちんと循環されるよう、室外から室内に流入する空気の気流が0.2毎秒以上であること……など。

■【例外その2】バーやスナック、小規模店などの場合

  • これまでどおり店内のすべて、もしくは店内の一部で喫煙できる。

原則として屋内は禁煙」となる法改正とは矛盾する気もするが、愛煙家には朗報である。

対象となるのはバーやスナック、または4月1日時点ですでにオープンしている小規模店(客席面積100平米以下、かつ資本金5000万円以下)。これらの店では、いずれも現在と同じく自由な喫煙が認められる。

  • 喫煙可能なバーやスナックが掲げる標識

というのも、バーやスナック、そしてタバコ販売店は「喫煙が主目的」であると見做されたため、今後も「喫煙目的店」、または「喫煙目的室」がある店として保健所へ届け出れば、店内のすべて、もしくは一部で喫煙が可能となる。もちろん、これまでどおり飲食もOKだ。

一方、既存の小規模飲食店で喫煙が認められるのは、経過措置的な意味合いが強い。

大手飲食店には「喫煙専用室」を設置する経済力やスペースがあっても、小規模飲食店はそう簡単にはいかない。いきなり全面禁煙にすることで経営が傾くのを防ごうとする狙いもあって、しばらくは法改正以前のルールの適用が許されたのだ。4月1日以降にオープンする小規模飲食店にこの例外が適用されない理由もそこにある。

ということで、既存の小規模飲食店の場合も、バーなどの「喫煙目的室」と同じく、「喫煙可能店」もしくは「喫煙可能室」がある店として届け出れば、今後も店内のすべて、または一部で喫煙が可能となり、こちらも飲食が許される。


以上、飲食店における例外を紹介してきたが、いずれの喫煙可能スペースにも20歳未満は立ち入りが禁じられている。それは客でも店員でも例外はない。

そして繰り返しになるが、この法改正は受動喫煙の防止が主目的で、屋内ではタバコが吸えなくなる、というのが大前提。よって、標識のない店はすべて「全面禁煙店」を意味するし、紛らわしい標識を掲示したりすれば50万円以下の過料(罰金)が課せられる。飲食関係者は特に覚えておこう。

参考:厚生労働省Webサイト「なくそう!望まない受動喫煙。