パナソニックが「CES 2020」で海外発表した、ブランド初の完全ワイヤレスイヤホン2機種が、いよいよ国内で4月中旬に発売されます。ノイズキャンセリング機能付きの上位モデル「RZ-S50W」と、エントリーモデル「RZ-S30W」のファーストインプレッションをお伝えします。
RZ-S50W/S30Wの詳細はニュース記事も合わせてお読みください。価格はオープンプライスですが、想定売価(税別)はRZ-S50Wが21,000円前後、RZ-S30Wが13,000円前後になりそうです。
ノイキャン搭載なのに驚きの小ささ「RZ-S50W」
RZ-S50Wの本体はコロッとした丸みのあるデザイン。この小さなイヤホンに最先端のノイキャン機能が搭載されているとはとても思えません。本体にはノイキャン用と通話用、左右で計6個のマイクが載っています。本体と充電ケースの両方がとてもコンパクトなRZ-S30Wは、女性の音楽ファンにも最適なイヤホンです。
どちらのモデルも、側面パネルにタッチセンサーリモコンを内蔵。タッチ操作へのレスポンスがとてもよく、操作エリアも十分に広く設計されています。このタッチセンサーの表面と基板にアンテナを組み込んだことで電波を受信できるエリアが広く取れるだけでなく、感度の低下につながる人の体と距離を離せることから、Bluetooth接続の安定性も高くなります。
どんな音楽プレーヤーとも左右イヤホンの同時接続ができるので、音切れやノイズも低く抑えられるそうです。今回は残念ながら屋外の電波環境が厳しい場所でテストができなかったため、接続性能の検証については別の機会に試してみたいと思います。
パナソニックではノイズキャンセリングイヤホンのパフォーマンスを最大化するためには、ドライバーの基本特性を高めることが何より大事という考え方から、それぞれの機種にベストなドライバーを搭載して音質を練り上げてきました。RZ-S50Wには8mm径、RZ-S30Wには6mm径のダイナミック型ドライバーを載せています。
上位のRZ-S50Wに搭載しているドライバーの振動板には、余計な響きを抑えてクリアなサウンドを再現するバイオセルロースが使われています。音場の見晴らしが広くクリアで、ボーカルには自然な立体感。スムーズに伸びる低音が演奏の足場をしっかりと固めて、全体にまとまりと一体感のあるサウンドを聴かせます。
エントリーのRZ-S30Wも、サイズから想像できないほど力強くインパクトのある中低域を特徴とするイヤホンです。本体がとても小さいイヤホンなので、男性が使うときはイヤーピースに大きめなものを選んだほうが遮音性を高められるのでベターだと思います。
ノイキャンと外音取り込みの効果は?
RZ-S50Wにはテクニクスの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ70W」と同じ、「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」技術が採用されています。本体の外側に向けたマイクで集めた音の解析とノイズのフィルタリングはデジタル処理をメインに行い、ノズルの内側に搭載したマイクの音声は電子回路によるアナログ処理でノイズを除去。遅延を抑えながら膨大なデータを処理できるため、音楽体験に影響を及ぼさずに強力なノイズキャンセリング効果が引き出せます。
ノイズキャンセリングはオン/オフが選べます。オンにすると周囲の騒音が驚くほどに静まり返り、にぎやかな環境でも音楽を聴くことだけに集中できます。今回試した限りではノイズキャンセリング機能をオンにしても耳穴に内圧がかかるような違和感もなかったため、飛行機による長旅の間も心地よく楽しめそうでした。
RZ-S50Wには外音コントロール(取り込み)機能も搭載されています。こちらも試してみたところ、イヤーピースによるパッシブな遮音性が高いためか、機能をオンにしても外の音がすべて聞こえてくるわけではなく、主に人の声を中心とした中音域の環境音が聞き取りやすくなりました。右側イヤホンのセンサーリモコンを2秒長押しするとNCのオン/オフと外音取り込みが切り替わるので、イヤホンで音楽を聴きながらまわりの音にも注意を向けたい場面などですばやくスイッチしながら使い分けられそうです。
RZ-S50Wは音声通話用の高精度なビームフォーミングマイクを搭載しています。通話用マイクも風切りノイズを拾わないよう、ハウジングに設けたマイク穴の構造などにも気を配ってクリアな音声通話を可能にしています。集音性能を高めるために、パナソニックが家庭用コードレス電話の開発により培ってきたノウハウが活きているそうです。こちらもまた次の機会に実力を調査してみたいと思います。
RZ-S50W/S30Wの音を聴いてみる
筆者が持参したiPhone 11 Proで聴いた各イヤホンの音質について、改めて振り返っておきましょう。
RZ-S50Wで聴いたMISIAの「アイノカタチ」は声の質感がとてもシルキーで滑らか。ふくよかな量感も楽しめます。音場が広く見渡せて、高さ方向への高域の伸びも鮮やかです。低音がタイトに引き締まっているので、一体感あふれる心地よいグルーブが体に染みこんできました。ベックの「Saw Lightning」では、厚みがあるのに軽やかなベースとリズムセクションが魅力的に感じました。歪みのない重厚なエレキギターの音色にも深みがあります。上原ひろみのピアノは細かな音の粒立ちまできらびやか。NCをオンにした状態でも音の輪郭が鮮明度を失わず、リアルなピアノの音色が味わえます。
RZ-S30Wの音は明るく元気。テイラー・スウィフトの「Blank Space」のようなポップサウンドにとてもよく合いました。ボーカルの声の張り出しがキツくなり過ぎないので、バンドによる演奏の立体感が自然に引き立ってきます。山中千尋の「ヘリオトロープ・ブーケ」では、エレクトリックピアノの淡いハーモニーの階調感をきめ細かく描いてみせました。
両機種がともに対応するモバイルアプリ「Panasonic Audio Connect」からは、NCと外音取り込みを100ステップから調整できたり、5バンド・オーディオイコライザーを使って好みの音にカスタマイズもできます。必要十分な機能をシンプルなUIにまとめたアプリなので、ワイヤレスイヤホンは初めてというユーザーでも迷うことなく使いこなせると思います。
どちらのイヤホンも本体はIPX4相当の防滴設計としているので、雨の日の屋外や汗をかくスポーツシーンでも安心して使えるのがうれしいところ。満を持して登場したパナソニック初の完全ワイヤレスイヤホンは、サウンドと機能ともにスキのない抜群の安定感が感じられるベスト・イン・クラスといえるできばえでした。同じ価格帯の製品と比べて、お買い得感の高さを実感できそうです。