東武鉄道は2月22日から3月8日まで「SL大樹」運転日となる計7日間、「返ってきた! あっぱれ日光! SL大樹珍道中 ~EDO WONDER TRAIN~」を開催する。初日の2月22日、「SL大樹3・4号」で取材を行うことができたので、その様子をお届けしたい。
「返ってきた! あっぱれ日光! SL大樹珍道中 ~EDO WONDER TRAIN~」は、鬼怒川線を走る「SL大樹」と、沿線の人気テーマパーク「江戸ワンダーランド日光江戸村」のコラボレーションにより開催されるイベント。昨年2月にも開催され、今年は前回よりパワーアップした内容となっている。
下今市駅から発車する「SL大樹3号」では、「風魔忍者の逆襲! SL忍者列車の巻」が上演された。発車すると早速、江戸忍者と町娘が乗客たちに挨拶を行う。その中で江戸忍者は、「このSL大樹、敵に狙われておるらしい。周りをよく見て、景色を見ながらも敵の忍者がおらぬか確認してみてくれ」と乗客たちに呼びかけた。
大谷向駅を通過して間もなく、「本日は、よくぞこのSL大樹にご乗車なされた……」と、車掌ではない声が車内放送で聞こえてきた。この声こそが風魔忍者の頭領だ。彼らは昨年、「SL大樹」を乗っ取ろうとしたが失敗。そのリベンジを果たそうと今回、再び現れた。
続けざまに風魔忍者は、忍術で「SL大樹」を爆発させようとする(音声によるパフォーマンス)が、江戸忍者の術で無事回避。しかし風魔の脅威は収まらず、秘術によって「SL大樹」を大爆発させると宣戦布告した。最後に頭領自ら、「貴様に止めることができるかな?」と高らかな笑い声を上げながら放送を終えた。
ここで江戸忍者は、「敵がどこから来るかわからん。みんなに武器を配ろうと思う」と話し、乗客全員に手裏剣型の記念乗車証を配布した。記念乗車証を配布しつつ、乗客ひとりひとりと話しながら車内を盛り上げる。
大桑駅を通過すると、車窓右手に見える東武建設の屋根上で、風魔忍者と仲間の江戸忍者が交戦している様子が見えた。高い足場の上で奮闘するも、残念ながら仲間たちは風魔忍者を倒すことができなかった。そこで江戸忍者は乗客たちに、「秘伝の術であれば私1人では跳ね返すことができないが、皆様にも術を唱えていただいて、風魔の秘伝の術を跳ね返そうと思う」と呼びかける。
大谷向駅で爆発の術を跳ね返したときのかけ声を乗客たちにも伝授し、江戸忍者と乗客たちとで一丸となって風魔忍者に立ち向かう。そしてこの先、新高徳駅の手前にある鬼怒川橋りょうで、風魔忍者たちが待ち構えていた。はたして、彼らの脅威から「SL大樹」を守りきることはできるのか?
「風魔忍者の逆襲! SL忍者列車の巻」の終演後、鬼怒川温泉駅前広場の転車台にて、「SL大樹」の蒸気機関車と車掌車が方向転換を行う。方向転換の間、鬼怒川温泉駅の駅長と東武日光駅の駅長が観覧中のこどもたちにインタビューを行い、それに合わせて惰行・係員呼び出し・連結のパターンで汽笛の合図が実演された。
蒸気機関車の向きが変わったところで、車掌車から「天下の大泥棒・石川五右衛門」が登場。駅前広場のステージ上で「庶民のヒーロー・鼠小僧」と合流し、役人たちとの捕り物劇を繰り広げた。ステージ上を縦横無尽に駆け回る、迫力満点のアクションから目が離せない。思わず笑えるシーンも随所に織り交ぜられており、駅前広場が笑いと歓声に包まれた。
鬼怒川温泉駅から「SL大樹4号」に乗車。この列車では「石川五右衛門初登場! SL捕り物列車の巻」が上演され、駅前広場での捕り物劇で見事に役人から逃れた鼠小僧と石川五右衛門が同乗した。下今市駅に向けて出発した後、鼠小僧が現れ、「このSL大樹に乗車する皆様に大変お世話になりまして、そのお礼と言っちゃなんですが、奉行所から千両箱を頂戴して参りました」と、乗客に小判型記念乗車証を配布した。
しかし、捕り物劇は駅前広場のステージだけでは終わらない。「SL大樹」の走行中も、沿線のあちこちに役人らが出没し、「SL大樹」との並走を繰り広げる。鬼怒川橋りょう付近では、騎馬武将が走行中の列車との並走を披露。走る列車と連動し、沿線で繰り広げられる躍動感あふれるパフォーマンスに、乗客たちも魅了された様子だった。
役人はおもに2~3人で1組となって「SL大樹」を追いかけてくるが、大谷川橋りょうでは、役人らが6人そろい、列車を追ってきた。はたして、鼠小僧と五右衛門は役人たちから逃げ切ることができるのか?
3月8日までのイベント期間中、「風魔忍者の逆襲! SL忍者列車の巻」は「SL大樹1・3・5号」、「石川五右衛門初登場! SL捕り物列車の巻」は「SL大樹2・4・6号」にて上演される。いずれも土日に運行される予定だ。なお、「SL大樹6号」の運転時のみ、鬼怒川温泉駅前広場での捕り物劇は行われない。
両ストーリーとも進行が「SL大樹」の走行と連動しているため、列車に乗るだけで臨場感あふれるアトラクションを体験できる。物語の登場人物との距離が非常に近く、乗客たちを積極的に盛り上げる場面もあり、彼らの人柄の良さも感じられる素敵な列車だと筆者は感じた。今回、あえてどちらの結末も紹介しなかったが、気になった人はぜひ、「SL大樹」と鬼怒川線沿線で巻き起こる「江戸ワンダーランド」の活劇に足を踏み入れてみてほしい。