JR東海は25日、日本車輌製造豊川製作所にて、N700S量産車の搬出作業を報道関係者らに公開した。先頭車両をトレーラーへ積み込む作業が行われたほか、量産車に搭載される機器なども展示された。N700Sは7月1日の営業運転開始を予定している。

  • N700S量産車第1編成の先頭車両(16号車)

N700S量産車は、2018年に製作されたN700S確認試験車による約2年間、計33.4万kmに及ぶ走行試験で得られたデータや解析結果をフィードバックさせ、仕様などを決定。東海道・山陽新幹線の車両N700系の置換えとして営業投入される。これまで積み上げてきた技術開発の成果を取り入れるとともに、小型・軽量化を徹底し、最適な床下機器配置とすることで、16両編成の基本設計を用いて12両・8両といったさまざまな編成長を容易に構成できる「標準車両」を実現した点も特徴となっている。

今回、報道関係者らに公開された車両は、N700S量産車第1編成(J1編成)の先頭車両となる16号車(744-1)と、中間車の15号車(747-501)。先頭車両はN700S確認試験車と同様、N700系シリーズの形状をさらに進化させ、左右両サイドにエッジを立てた「デュアル スプリーム ウィング形」の先頭形状を採用している。これにより、走行風を整流するとともに、走行抵抗も低減される。前照灯はエッジの部分に配置し、LEDを採用して省エネルギー化を実現するとともに、形状を工夫して視認性を向上させている。一方、15号車にはN700Sのシンボルマークが掲出されていた。

  • N700S量産車の主変換装置(CI)、自走用バッテリ装置、台車の展示も。台車にはフルアクティブ制振制御システムが搭載される

報道公開では、N700S量産車に搭載される台車と主変換装置(CI)、自走用バッテリ装置の展示も。高速鉄道で世界初というバッテリ自走システムを搭載したことにより、自然災害等による長時間停車時においても、避難が容易な場所まで自力走行が可能になるという。その他、防犯カメラを客室内の天井にも増設し、通話装置の機能を強化し、停電時におけるトイレ機能を確保するなど、異常時対応力の強化が図られる。

ATCとブレーキシステムの改良により、地震時のブレーキ距離を短縮したほか、着雪防止対策や状態監視機能を強化したことで安全性・安定性が向上。グリーン車と先頭車、パンタグラフ搭載号車に制振性能の高いフルアクティブ制振制御装置を搭載し、乗り心地も向上する。「デュアル スプリーム ウィング形」の先頭形状、駆動システムへのSiC素子の採用により、消費電力量も削減。パンタグラフやブレーキ装置の摩耗部品を長寿命化し、交換周期を延伸することで、検修作業の省力化も実現するとのこと。

  • 先頭車両の積込み作業。車体をクレーンで吊り上げた後、トレーラーへ積み込まれる

今回公開されたN700S量産車2両のうち、先頭車両の16号車をクレーンで吊り上げ、トレーラーへ積み込む作業も行われた。約30分間にわたる作業の後、囲み取材に応じたJR東海新幹線鉄道事業本部車両部担当部長の田中英充氏によれば、トレーラーに積み込まれた車両はJR東海浜松工場へ運ばれ、「16両編成に組成して編成試験を行い、工場内で走行試験を重ねて機能を確認した後、本線で試運転を行います」とのこと。N700Sの営業投入に関して、「東京オリンピック・パラリンピック前に5編成そろえ、7月1日に営業運転を開始する予定です」と述べた。

JR東海はN700S量産車を2020年度に12編成、2021年度に14編成、2022年度に14編成、計40編成を投入予定。N700Sの一部編成に次期軌道状態監視システムを搭載し、既存のN700AタイプにN700Sの一部機能を追加する改造工事も行う予定としている。

  • N700Sのシンボルマークがデザインされた中間車(15号車)も公開

  • N700S量産車の先頭車両(16号車)の外観