豊島竜王・名人は第1局に敗れるも、その後2連勝で逆転挑戦

永瀬拓矢叡王への挑戦権を争う、第5期叡王戦挑戦者決定三番勝負第3局が2月24日に東京・将棋会館で行われました。豊島将之竜王・名人と渡辺明三冠の対決という、現在の将棋界のゴールデンカードを制したのは豊島竜王・名人でした。

勝った方が挑戦となる第3局は改めて振り駒が行われ、豊島竜王・名人が先手番に。ここまでの2局は角換わりの戦型でしたが、4手目に渡辺三冠が角道を止めて雁木を選択しました。渡辺三冠は2月20・21日に行われた王将戦第4局でも同じく雁木を採用しており、今一番後手番で自信を持っている形なのかもしれません。

豊島竜王・名人は自玉の囲いもそこそこに、棒銀を繰り出して素早く戦いを起こします。渡辺三冠も8筋から反撃し、いきなり激しい展開となりました。

この激しいやり取りでリードを奪ったのは豊島竜王・名人でした。自玉付近の桂を取られる代償に、棒銀をさばいて飛車の成り込みに成功します。しかし、渡辺三冠も秘術を尽くして応戦。飛車も角も成れる局面で、どちらも成らずに飛車を自陣深くに引き揚げ、容易に土俵を割りません。

一気に決め切れないとみた豊島竜王・名人は、タダ捨ての銀で角を呼び込んで、王手角取りをかける大技で自玉を安全にします。これで流れは緩やかになり、両者とも自陣に金銀を打って囲いを再構築。中盤戦に戻ったかのような局面となりました。形勢もすでに豊島竜王・名人良しとは言い難く、難解です。

中段の竜と角を狙って、駒を打って攻める渡辺三冠。豊島竜王・名人は目標にされた角を切り飛ばして後手玉を露出させたあとに、竜も切り捨てて駒を補充して寄せを目指します。豊島竜王・名人の攻めを渡辺三冠がどう受けるかという局面。1分将棋の中、攻め駒を温存するために銀を引いて受けた手が、渡辺三冠の敗着となってしまいました。ここでは先手玉への寄せは見えなくなるものの、桂を自陣に投入すればまだまだ長い戦いになったようです。

本譜は豊島竜王・名人の攻めが素早く、あっという間に挟撃態勢を築き上げて渡辺玉を寄せ切り、123手で豊島竜王・名人が熱戦を制しました。

敗れた渡辺三冠はこれで公式戦4連敗。その中身が叡王戦挑決第2、3局、棋王戦第2局、王将戦第4局といずれも大きな勝負だけに、手痛い連敗です。

勝った豊島竜王・名人は永瀬二冠との初の番勝負を戦います。若い複数冠保持者対決はどちらに軍配が上がるのでしょうか。3月8日の七番勝負発表会で、対局日程や対局場などの発表、そして振り駒が行われます。

棋界最高峰の対決を制した豊島竜王・名人
棋界最高峰の対決を制した豊島竜王・名人