スポーツクライミング第2回スピードジャパンカップが22日、モリパークアウトドアヴィレッジ(東京・昭島市)で開催された。強い風が吹く難しいコンディションの中で栄冠を勝ち取ったのは、男子が土肥圭太選手、女子が伊藤ふたば選手だった。
予選から波乱の展開に
関東地方に”春一番”が観測された22日。選手たちは高さ15mという国内最大級のウォールに果敢に挑み、会場に詰めかけたギャラリーを沸かせた。東京2020大会の正式種目になった「スポーツクライミング」にはリード・ボルダリング・スピードの3種目があるが、この日に開催されたジャパンカップでは、スタートからゴールまでのタイムを競う「スピード」における日本一の座が争われた。
プラクティスタイムの後に、予選がスタートした。出場選手は男子が24名、女子が26名。2回のトライで良い方の記録が採用されるとあり、スタートの合図とともに、爆発的な勢いで壁を駆け登る選手たちの姿があった。
参加選手の年齢層は、高校生から社会人までと幅広い。その中で、やはり日本記録を持っている楢崎智亜選手、野中生萌選手、ジュニア日本記録を持っている土肥圭太選手、倉菜々子選手らが好記録を残した。しかし優勝候補の一角だった原田海選手が、予選でまさかの脱落。原田選手のトライ時には不運にも、オートビレイ機の安全ロープが大きくあおられるほどの強風が吹いていた。
スピード競技では、小さなミスがタイムに大きく影響する。ホールドと呼ばれる突起物をつかんだ手が滑る、あるいは足が上手くかからなかった―――。そうしたハプニングは付き物だ。選手のパフォーマンスを、固唾を飲んで見守るギャラリーたち。途中でバランスを崩せば会場にもどよめきが起こり、完璧なクライミングで登り切った選手にはひときわ大きな歓声と拍手が送られた。
決勝トーナメントを制したのは?
予選が終わると、通過選手(男子16名、女子16名)が発表された。男子は16名すべてが7秒台を記録するという接戦に。その中でもトップで通過したのは、国内で唯一の”スピード専門選手”として活動する、前回大会の優勝者池田雄大選手だった。
勝ち抜き戦で争われる決勝トーナメントを前にして、しばし休憩となった。大会を盛り上げるべく、この日の会場には協賛企業がブースを出展。久光製薬ではオリジナルのノベルティを配布しており、親子連れなど来場者で賑わっていた。
続く決勝トーナメントも波乱含みの展開。予選トップ通過の池田選手が、予選16位の清水裕登選手に敗れるなど混戦となった。準決勝に残ったのは、女子が伊藤ふたば選手、野口啓代選手、野中生萌選手、倉菜々子選手、男子が今泉結太選手、土肥圭太選手、楢崎智亜選手、竹田創選手。
女子は、東京五輪代表が決まっている野口選手をおさえた伊藤選手と、スタート直後にスリップした野中選手を振り切った倉選手が決勝に進出。決勝では伊藤選手が、この日2度目となる8秒台を出して初優勝した。一方、男子は決勝で土肥選手が東京五輪代表の楢﨑選手と対戦。ウォールの中腹でタイムロスした楢﨑選手に対し、土肥選手は最後まで安定した登りを維持して6秒73の好タイムで初優勝した。
優勝した伊藤選手は「大会は緊張感がありました。速い人と競うと、自分のレベルも上がりますね」と振り返った。この日の風について聞かれると「唸っているのが聞こえて怖かったんですが、けがもなくて良かった。次の(3月に開催される)リード・ジャパンカップに向けて頑張ります」。
優勝した土肥選手は「実は、直前まで調子もあまり良くなかったんです。本番に強いところが出せて良かった」。風の強さには、予選のときから驚いていたそう。最後に「この勢いをコンバインドの大会(リード・ボルダリング・スピードの3種目で競われる)につなげられたら」と話していた。