いまは家電メーカー各社がロボット掃除機を開発していますが、2002年の発売以来、ロボット掃除機のトップを走っているのがアイロボット「ルンバ」シリーズです。そんなアイロボットジャパンが2月19日、ルンバの最新かつ最上位モデル「ルンバ s9+」(以下、s9+)を発表しました。

s9+は、発売以来ずっと丸型だった本体デザインを一新。D字型となり、さらに吸引力がパワーアップ。さらに高性能センサーの搭載によって、より賢い動作をするようになりました。発売は2月28日、価格はオープン、公式オンラインストア価格は169,800円(税込)です。

  • ルンバ s9+、アイロボットのコリン・アングルCEO

    新製品のs9+を手にする、アイロボット・コーポレーションの創設者でありCEOのコリン・アングル氏。なんと、本体が丸型ではなくD字型に進化! 古くからルンバに触れてきた筆者だけでなく、ルンバがD字型になったのは業界的にも衝撃

D字型で掃除能力が大幅にアップ!?

ルンバには現在、比較的安価な600シリーズから、パワフルな吸引力と部屋の間取りを学習する賢いナビゲーションを持つフラッグシップモデルのi7+まで、国内では大きく4つのシリーズがあります。今回のs9+は、i7+のさらに上位となる、まさにルンバの最高峰、フラッグシップです。

コリン・アングル氏は、発表会のプレゼンで「パワーもスペックもすべてビーストだ」と盛大に披露しました。なんでも、仕様的にはオーバースペックだそうで、アップデートによる進化を想定しているんだとか。目に見える機能的な追加や変化はないとしても、広い意味でのソフトウェアは3カ月スパンでアップデートしているとのこと。

  • ルンバ s9+

    本体がD字型になった最上位モデルのs9+。上部には大きな円盤状のパーツが配置されるなど、デザインが大幅に変わっています。金属パーツに渋い銅色を採用するなど、全体的にシックで落ち着いた印象になりました

s9+のポイントは、なんといっても本体のカタチ。従来のルンバは、すべて引っかかりのない丸型でしたが、s9+はD字型になっています。

発表会でs9+のデモを見たところ、D字型になったメリットは一目瞭然。壁や部屋の角などに、本体がピタッとはまって隅のゴミもしっかり掃除できるのです。これまでのルンバシリーズは、あまり隅の掃除には強くない印象でしたが、s9+はこの課題にしっかり答えを出しました。

【動画】本体前面が角形になっているので、部屋の隅に本体がしっかりと入って掃除。角の部分では、ゴミの取り残しがないようにヘッドを振る動作をしています

D字型にしたもうひとつのメリットが、ブラシパーツを本体前面ギリギリに配置できるようになったこと。丸型の本体では、底面のブラシを車輪の間に配置する必要がありました。このため、ブラシサイズは本体の最大幅より小さくならざるをえません。

一方でD字型の場合は、本体前方ギリギリにブラシを配置できるため、本体幅に近い長さのブラシを搭載できます。s9+のブラシ幅は、i7シリーズの約30%も長いのです。ブラシ幅が3割アップということは、単純に見れば一度に掃除できるエリアも3割アップということ。残念ながら今回は掃除時間の比較デモはありませんでしたが、掃除時間の短縮も期待できそうです。

  • ルンバ s9+

    s9+(写真左)と、これまでのフラッグシップモデルだったi7(写真右)の裏面を比較。s9+では、ブラシ幅が30%(i7比)も広がりました。しかも本体サイズは少しだけ小さくなっています。i7は直径35.1cm×高さ9.2cmでしたが、s9+は最大幅部分が31.2cm、高さが8.9cmです。重さは両者とも4kgです

  • ルンバ s9+

    s9+(写真左)とi7(写真右)のサイドブラシを比較。s9+ではブラシ位置が前面にくることで、サイドブラシも短くできました。サイドブラシは長いほうが消耗が早いため、この改良もうれしいポイント。ブラシ数も従来の3本から5本に増え、掃除効率がアップしたそうです

【動画】部屋の隅に赤い粉を置き、s9+で掃除。角の部分にしっかり入り込む本体と、掃除効率がアップしたサイドブラシのおかげで、ゴミの取り残しはありません

もちろん、掃除機としての吸引力もアップしています。アイロボットによると、本体をD字型にすることで、内部構造の効率化やモーターのパワーアップが可能になり、s9+は600シリーズ比で約40倍の吸引力。ちなみに、i7比では約4倍の吸引力です

部屋の状況を3Dで把握する高性能センサー

「隅のゴミがとりやすい」「ブラシ幅を広くとれる」など、メリットの多いD字形状ですが、いままでアイロボットがこのD字形状を採用していなかったのには理由がありました。

それは、角のない丸型なら、狭い場所にはまり込んでも、その場で回転して自力脱出できるから。スマートフォンとも連携するルンバは(一部モデルを除く)、留守中にアプリから動作を実行することも多いため、動き続けることは重要な課題でした。

s9+はD字型になるだけでなく、これまでとは違う高性能センサー(センサーの種類は非公開)を追加。従来は本体上部のカメラパーツで部屋の形を認識していましたが、s9+はカメラと高性能センサーを併用し、部屋の構造を立体的に把握して「狭い家具の間にハマって動けなくなる」などの問題を解消しました。アイロボットでは、D字型の本体と高性能センサーの組み合わせを、「PerfectEdge テクノロジー」と読んでいます。

  • ルンバ s9+

    従来モデルと同じカメラセンサーに加え、高性能センサーを追加して部屋を立体的に把握

【動画】本体幅と同じくらいスキマに入っても、迷わずに掃除、脱出しているのがわかります

クリーンベースも付属、掃除のたびにゴミ捨ては不要

i7+が発表されたとき、話題になったのは「クリーンベース」の存在です。クリーンベースは、充電用ドックに大きなゴミ収集ボックスを組み合わせたもの。ルンバ本体が充電ドックに帰還するたびに、自動的にルンバ内部のゴミをクリーンベースが吸引します。なので、ルンバの掃除が終わるたびに、ルンバ本体からゴミを捨てる必要がありません。クリーンベースが収納できるゴミの量は、s9+のダスト容器×30杯分です。

  • ルンバ s9+

    クリーンベースと充電中のs9+。i7はクリーンベース付属モデル(i7+)と、充電専用ドック付属モデル(i7)のラインナップでしたが、s9+はクリーンベース付属モデルのみです(日本での発売時点において)

  • ルンバ s9+

    クリーンベースの台座部分に四角い穴が開いていて、この穴から、帰還したs9+本体のゴミを自動的に吸引します。穴の位置が異なるため、i7との併用はできません

【動画】s9+がクリーンベースに帰還するところ。これまではメインボタンが光って掃除機の状態を表示していましたが、s9+で上部円盤パーツ周りが光ります。通常時は白、ゴミを見つけたときやクリーンベースとの通信中は青、電源コードに絡まるなどのエラー時は赤に点灯

細かい部分ですが、s9+はゴミフィルターの性能もアップ。ダスト容器には大型の特殊素材フィルターを採用し、カビや花粉といったアレルゲンを99%捕捉するようになりました。

  • ルンバ s9+

    s9+本体のダスト容器の中身は、手動で捨てることも可能。ダスト容器は本体上部の円盤パーツの下に格納されています

  • ルンバ s9+

    取り外したダスト容器と高性能になった大型フィルターは、アレルゲンをほとんどカットする性能を持ちます。ダスト容器はフィルターごと水洗いも可能です

ナビゲーションシステムには従来と共通のアプリを使用

ルンバシリーズといえば、スマートフォンと連携した操作性のよさも人気のひとつ。もちろんs9+も、スマートフォン用アプリ「iRobot HOME」での操作が可能です。s9+を何度か利用することで、iRobot HOMEが家の間取りを学習。より効率的に掃除します。加えて、部屋を登録して「キッチン」「書斎」などと間取りを覚えさせ、「台所だけを掃除」といった操作もできます。このあたりの機能はi7と共通です。

  • ルンバ s9+

    何度かs9+を動作させることで、フロアの形を学習。フロアを部屋ごとに区切り、特定の部屋だけを掃除させることが可能です。赤いエリアは「進入禁止」エリア。ペットの水が置いてある場所など、掃除機に入ってほしくない場所を指定できます

【動画】学習前のs9+(動画左)と、学習後のs9+(動画右)を比較。学習後のs9+は、部屋を全面掃除してから次の部屋に移動します。また、フロア全体を掃除する時間が、非学習型より早いのもわかりますね

  • ルンバ s9+、ブラーバ ジェット m6

    アイロボットの床拭きロボット「ブラーバ ジェット m6」との連携も。「s9+の掃除が終わったら、自動的にm6で水拭き掃除をする」といった動きをアプリで設定できます