米Qualcommは2月18日 (現地時間)、5Gに対応するモバイル端末向けモデムの新製品「Snapdragon X60 5G Modem-RF System」を発表した。初の5nmプロセスによる5Gベースバンド。国ごとに異なる5Gの移行シナリオに柔軟に対応できる設計になっている。今年第1四半期にサンプルの出荷を開始、同モデムを搭載する商用製品の発売は2021年初めになる見通し。

X60は、X50・X55に続く5G対応モデムの第3世代の製品だ。FDD、TDD、SA (スタンドアロン)、NSA (ノンスタンドアロン)といった5Gモードをサポート。ミリ波、sub-6、ミリ波-sub6のキャリアアグリゲーション、sub6キャリアアグリゲーション (FDD-TDD、FDD-FDD、TDD-TDD)、DSS (ダイナミックスペクトラムシェアリング)に対応する。最大通信速度は下り7.5Gbps、上り3Gbps。5GデュアルSIM機能も用意している。

Qualcommは「オペレータが利用できる帯域リソースを最大限に活用するための柔軟性を提供します」としている。例えば、動的に周波数を共有するDSSによって、すでにLTEで用いているFDDバンドで5Gサービスをデプロイできる。5G FDD-TDDキャリアアグリゲーションがキャパシティと範囲の拡大をもたらし、そしてミリ波-sub6キャリアアグリゲーションによってスループットを最大5.5Gbpsに引き上げられる。

7nmプロセスで製造されていたX50/X55に対して、5nmプロセスのX60は電力消費の効率性に優れ、チップのフットプリントが小さい。また、X60に組み合わせられるミリ波アンテナモジュール「QTM535」も現世代のQTM525よりコンパクトになる。5Gアンテナは複雑であり、スマートフォンのようなコンパクトな携帯機器はデザインの制約を受ける。例えば、Appleが次期iPhone向けに独自のアンテナの設計に乗り出したと2月に Fast Companyが報じた。Appleは次期iPhoneにQualcommのモデムを採用するが、次期iPhoneのデザインでQTM 525アンテナの大きさを許容できなかったという。コンパクトなサイズはX60とQTM535の大きな強化点であり、Qualcommは「ミリ波のパフォーマンスを向上させながら、これまでにないスマートなデザインのミリ波対応スマートフォンを可能にする」とアピールしている。