角換わりの最新形で勝利。これで対羽生戦3連勝
2月18日に東京・将棋会館にて、木村一基王位への挑戦権を争う、第61期王位戦挑戦者決定リーグ白組(主催:新聞三社連合)の羽生善治九段-藤井聡太七段戦が行われました。結果は先手の藤井七段が勝利。初参加の王位リーグで好調な滑り出しとなりました。
先手番の藤井七段が角換わりに誘導すると、羽生九段は迷わず追従し、角換わり腰掛け銀の最新形の戦いに。途中の手順は異なるものの、昨年末に藤井七段が王位リーグ入りを決めた、▲藤井七段-△斎藤慎太郎七段(現八段)戦と同一局面に合流しました。自身が勝利した将棋と同じ進行をたどることもできた藤井七段でしたが、新手を披露して未知の局面に突入しました。
難解な局面を前に、両者まとまった時間を使うことが増えてきました。藤井七段は7筋に作ったと金を活用して羽生玉を追い詰めようとします。玉の退路がなくなって絶体絶命に見えた羽生玉でしたが、そこでじっと歩を突く妙手を羽生九段が着手。玉の懐を広げつつ、狙われていた飛車を助ける一石二鳥の一手でした。
攻めが止まってしまうと、豊富な持ち駒を利用されて厳しい反撃にあってしまう藤井七段。なけなしの一歩を使って詰めろを掛けた手が好手で、結果的には勝着となりました。
この歩打ちに対する有力そうな手段は3つ。持ち時間の少ない終盤で、選択肢の多い手を指されると迷ってしまうものです。羽生九段は21分考え、自玉近くに銀を残す順を選択しましたが、これが敗着に。正解は飛車をすぐに取らせた上に、玉を薄くするという選びにくい順でした。
本譜でも羽生九段は、藤井七段の巧みな手順で飛車を取られてしまいました。そのあとに藤井玉に迫る手番が回ってこなかったのが、先の選択の罪。他の手順なら自玉は薄くなるものの、反撃の余地があるため難解だったようです。
なかなか反撃に転じられない羽生九段。玉の早逃げで一手の余裕を得ようとしますが、藤井七段はと金を寄せて隙を与えません。羽生九段は攻防の角打ちから桂を無理やり入手し、その桂でついに藤井玉に迫りましたが時すでに遅し。角捨ての鮮やかな寄せの決め手で、一瞬にして藤井七段が羽生玉を寄せ切ってしまったのでした。
これで藤井七段は王位リーグで白星発進となりました。所属する白組で優勝し、紅組の優勝者との挑戦者決定戦を制すれば七番勝負進出となります。王位戦での最年少タイトル挑戦記録の更新はすでに不可能になってしまっていますが、最年少タイトル獲得の記録は更新可能です。