いよいよ後半戦に突入した冬ドラマ。その中でもフジテレビ系『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(毎週月曜21:00~)と、読売テレビ・日本テレビ系『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(毎週日曜22:30~)の2作品では、アクションシーンにも注目が集まっている。

  • 『絶対零度』沢村一樹(左)と『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』横浜流星&清野菜名 (C)フジテレビ (C)ytv

    『絶対零度』沢村一樹(左)と『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』横浜流星&清野菜名 (C)フジテレビ (C)ytv

■きっかけは『ボーン・アイデンティティー』

『絶対零度』アクションコーディネーターの藤井祐伍氏によると、本格的なアクションシーンのあるドラマは、数としては減少傾向にあるそう。その中でも盛り上がるのは、減少によって希少性が高まったこと、さらに、SNS・動画の発達で“絵になる”場面が拡散されるようになったためだろう。

近年は「クローズクォーターコンバット」と言われる近接格闘が流行しており、アクションシーンでの“手数”は「昔より格段に増えてると思います」(藤井氏)とレベルアップ。そのきっかけは、米映画『ボーン・アイデンティティー』(02年)だという。

同映画から、アクションシーンにフィリピンの武術「カリ・シラット」を取り入れるように。その後、海外の情報がどんどん入ってくるようになって、ブルース・リーが生み出してV6・岡田准一も取り組んでいる「ジークンドー」、フランスの軍事訓練が発祥の「パルクール」などが、アクション界で人気だそうだ。

  • 藤井祐伍氏

■横浜流星のパルクールに沸き立つ

『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』の第4話(2月2日放送)で、横浜流星が見せたのは、そのパルクール。メガネにスーツ姿で、追いかけてくる整備員たちを次々とスマートにかわし、SNSでは「華麗でかっこよすぎ」「どこでもすり抜ける感じが忍者みたい」と沸き立った。

一方、“ミスパンダ”としてキレキレのアクションを披露している清野菜名は「“動物的”なアクションで、自分に合ってる種類だと思ってるので、どんどん型にはまらず、動物的に動きたいなって思ってます。パンダはネコ科って聞いたので、そういう部分も入れて」と、人間離れしたダイナミックでアクロバットな技を取り入れた。

同ドラマの福田浩之プロデューサーは「清野さんと横浜さんが主導して『こんなアクションをしたい』『するべき』とアイデアを出してくれます」と、演者が意欲的に取り組んでいることを明かしている。

■骨折でもアクションを続けた池松壮亮

自身も出演やスーツアクターを務める藤井氏に、芸歴14年で見てきた中で、アクションにおいて最もすごいと思った役者を聞くと、『MOZU』で一緒だった池松壮亮を挙げた。

池松壮亮

「松坂桃李くんと1対1のシーンがあって、その時に結構アクションション練習をしてもらったんですけど、本番に入って1発目が終わり、『もう1回行きます』ってなったときに、顔をしかめたんです。その日は痛そうにしながらも撮り終えたんですが、病院に行ったら『折れてた』って言うんですよ。それでも何の泣き言も言わず、1日ずっとアクションをしていたんです。次の日もアクションがあったんですけど、『(骨折のこと)誰にも言わないでね』って言いながらずっとやっていたので、この人はすごいなと思いました」

藤井氏自身も、やはり大ケガの経験はあるそうで、「走ってるトラックの上に怪人の衣装を着て乗って、そこから降りるという動きだったんですが、年齢も若かったのでなんかやってやろうと思って。ちょうど覚えたての『側宙』っていう技をやりたくて、横に宙返りしながら落ちたら、着地はできたんですけどそこで(脚の骨が)折れて(笑)」と、なかなかの体験を笑いながら回想していた。

●藤井祐伍
1986年生まれ、福島県出身。ジャッキー・チェンに憧れ、ジャパンアクションエンタープライズの養成所に入所。『スーパー戦隊』シリーズや『仮面ライダー』シリーズなどでスーツアクター・出演を務めるほか、『MOZU』『奥様は、取扱い注意』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』などのドラマに出演。『ルパンの娘』『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』などのドラマ、『仮面ライダーアマゾンズ』などの映画でアクションコーディネーターを担当する。