ロジクール新製品『MX ERGO』は長く使えて体に優しい」という原稿を書いたのは2年ほど前。少なくても私にとっては「NO TRACKBALL,NO WORK」となっておりまして、最近では取材先でもトラックボールを使っています。

  • まだ買ったばかりの頃の「MX ERGO」

とっても大事に「酷使」していたのに……

MX ERGOは発表当時「ゲーミングマウスでも使われている高耐久スイッチを使いました」と説明されていましたが、連日の酷使に耐えかねたのかこの2年で不調になってしまいまして、これでは作業効率が落ちるので(トラックボールの新型が2年やそこいらでは出ないと思うので)新しいのを買いました。

ちなみに症状は「普通にクリックする分には問題ないけど、スイッチを押しっぱなしにしていると瞬間切れる事がある」です。原稿ファイルを他のフォルダにコピーするときとか、画像を選んで編集ソフトに入れるなどのドラッグ&ドロップやwebのテキストをコピペしようとする途中でスイッチがオフになるので「キーッ!」となってしまいます。

ちなみに、現在の大多数のマウスで使われている「メカニカル(マイクロ)スイッチ」は、物理的に接点を接触させる方式に由来して、「チャタリング」と呼ばれる一時的に接点がついたり離れたりするやっかいな現象が起こることがあります。ある程度補正しますが、経年劣化等でチャタリング時間が規定を超える、あるいは今回の私の事例のようにONのままのハズなのに瞬間切れるという状況になるのです。チャタリングが発生しない「光学式スイッチ」というのも出てきましたが、コストが高いのでMXシリーズを含む一般向け製品にはあまり採用されていません(ゲーミング製品の一部で使われだした程度です)。

新しいトラックボールは当然快調ですが、古いものをそのまま捨てるのはモッタイナイ。前の原稿を見ればわかりますが、前々世代のトラックボールはスイッチが不調になってもスイッチ交換をして対応していました。と言う事で、この壊れたトラックボールを直そう、と言うのが今回のお話です。

ちなみにいままでお出掛け用に持ち歩いていたM570はUSB接続だけで出先のノートパソコンだとドングルが邪魔(ケースに入れておいてもいいんですが、落とすことがあるので困りもの)。MX ERGOが使えればBuletooth接続で使えてハッピーです(ちなみにお出掛けトラックボール用に専用のケースも買ってます)。

  • お出掛け用ケースに入れたM570とMX ERGO。Logicool純正ケースがないのが残念なんですが、ピッタリの専用ケースが売られています

  • 新(左)旧(右)のMX ERGO。2年間の酷使によってLogiロゴも一部欠けており、小指のかかる樹脂も一部えぐれています。古い方にはサードパーティの赤ボールを入れており挿し色でアピール

  • ちなみに新しいロットは裏の台座のゴムのロゴがMX ERGOとなっており、初期ロットはLogiロゴです

半田付けは難しい? ならばスイッチを「洗って」みよう

スイッチ不良に対しては「新しいスイッチに交換」するのが従来の修理の定番でした。しかしスイッチ交換には「半田付け」という作業が必要です。半田付け工具を持っていないなら買わないといけませんし、スキルも必要です(最近の男子中学生はトランジスタラジオとか工作の時間に組み立てているのでしょうか?)。半田付けだけならばともかく、スイッチ交換の場合「スイッチを綺麗に外す」という工程があって、ちょっと大変。スイッチもその辺で売っているものではありません(通販で買うのが一番です)。

ここ数年は、スイッチを交換せずに何とかしようという対処方法も出てきました。先に説明したように、マウス等のメインスイッチではマイクロスイッチと言うものが使われており、物理的につなぎかえをしているので、長い間カチカチカチカチとやっているうちに劣化が生じてしまいます。この劣化した接点部分を綺麗にすればよい、という対処方法です。

接点部分を綺麗にするために使うのが「コンタクトスプレー」というもの。リレーなどの「接点を洗う」溶剤が入っています。コンタクトスプレーとしてKURE コンタクトスプレー(KURE 1047)を使う人が多いようですが、成分を見ると(揮発しない)鉱物油が入っていました。

そこで、今回はサンハヤトの接点洗浄剤(ニューリレークリーナー:RC-S201/RC-S121)を買ってきました(ヨドバシカメラで扱っているので全国通販可能ですが、秋葉原の取材の帰りにアキバヨドバシで購入)。

使い方は、マイクロスイッチ上部の飛び出している部分にスプレーノズルを当て、軽く吹き付ける感じで内部に浸透させ、その後「カチカチカチカチ」と何度も押し下げしてなじませ、最後に数時間放置して乾燥させれば出来上がり。これならばなんとかなる人も多いでしょう。

  • スイッチ交換以外の対応方法として洗浄剤で洗うという手法もあります。今回はサンハヤトの「(電子機器用)接点洗浄剤」を買ってきました。アキバヨドバシで買ったのですが、2フロア回ってやっと出てきました

ただし、マウスの外からコンタクトスプレーを吹き付けても意味がなく、スイッチに直接吹きかける必要があるので分解が必要となります。通常のマウスやトラックボールの分解をする場合、ネジが「ゴム足の下」や「銘版ステッカーの下」に隠れていることが多いのですが、幸いなことにMX ERGOは充電式で破棄時にリチウムイオン電池を分離するためにねじ穴がすべて見えています(マニュアルにも分解方法のイラストが書いてあります)。ただし星形の特殊ネジなので、ねじ回しセットを持っていない人はこれも買わないとダメです。

  • 購入時のマニュアルには「バッテリーの廃棄方法」と図解の説明書きがあります

  • 裏の台座を外すだけでネジが見えます! 星形の特殊ビスですが、そんなこともあろうかと……

  • 30種類のネジに対応したドライバーセットを引っ張り出してきました

  • 左のネジは浅いので外れるのですが、右のネジは深い所にあって、先ほどのドライバーセットでは対応不可。ナンテコッタイ

  • T6のドライバーであけたところ。上蓋とはフレキシブルケーブルで繋がっているので、写真撮影の都合上コネクタを外しました(白いプラを上に持ち上げるとフレキシブルケーブルが外れます)

  • 基板は意外とガッチリ止められているので、半田付けするとしても基板外しが大変そう。ホイールも外しました(外さなくても何とかなりそうですが、ついでにホイールも掃除しています)

  • あとは軽くスイッチ部分を押さえつつプシュっと洗浄液をスプレーしてから、表面にはみ出た液をティッシュで吸い取ってスイッチを10回ほどカチカチ。念のために3回ほど繰り返しました(調子が悪いのは左ですが、右もついでに洗浄しています)

最後に分解と逆順序で組み立ててから、スイッチを50回ほど連打して接点の汚れを溶剤に移してキレイにした後、溶剤が乾燥するまで一晩放置します。

翌日、テストしてみたところ問題なく使えるので、スイッチ交換をしなくても洗浄である程度は回復ができたといえるでしょう。しばらくはこれで大丈夫そうです。正月に作業して6週間ほど経過していますが、今の所問題なさそうなので、もし再度ダメになったら今不度はスイッチを交換することにします。

なお、最後になりますがマウスやトラックボールは結構精密に出来ており、普通は分解した時点で保証がなくなってしまいます。なので、保証期間中ならば今回のような清掃を行わずに、サポートに連絡するべきです。ロジクールで一度商品不良でサポートの対応をしてもらった事がありますが、おおむね悪くない感じでした。