前A級の阿久津主税八段を破り、1局残しての昇級決定。残留争いは山崎隆之八段と畠山鎮八段の二人に絞られる
第78期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の12回戦が2月13日に東西の将棋会館で行われました。2番手で昇級自力の斎藤慎太郎七段は、阿久津主税八段との対局で勝利。昇級の可能性を残していた行方尚史九段、深浦康市九段、千田翔太七段がいずれも敗れたため、斎藤七段は1局を残してA級への昇級と八段昇段を決めました。
11回戦終了時点で、7勝3敗は順位がいい順に斎藤七段、行方九段、千田七段。6勝4敗の深浦九段、永瀬拓矢二冠まで昇級の可能性を残していました。
斎藤七段-阿久津八段戦は、後手の阿久津八段が序盤から変化を見せました。先手の飛車先の歩交換を誘って、2筋からの逆襲を目指します。斎藤七段は早々に持ち駒の角を手放して応戦し、歩得を果たしました。打った角を働かせられれば先手が優位に、働かせずに負担にするか、持ち駒の角を有効に使えれば後手が優位に立つという展開に本局はなりました。
阿久津八段は向かい飛車に振り、飛車・銀・桂で2筋からの突破を目指します。対する斎藤七段は2筋は受け流す方針。2五へ跳ねてきた桂を取らずに、4五へ跳ね違えて中央に活用していきました。そして角の利きを生かし、盤上に成駒を量産することに成功します。角が盤上で大威張りする形になり、角の働きを巡る争いは斎藤七段に軍配が上がりました。
先手の角は攻めに働いた後、受けでも威力を発揮。2筋の突破を許しても、角の利きで飛車を成り込ませません。2筋で後手の駒が渋滞するのをしり目に、先手は成駒をどんどん後手玉に寄せていき、着実に美濃囲いの金銀をはがしていきます。そして最後まで飛車を成り込ませぬまま、77手で斎藤七段が勝利を収めました。
この日最速で勝利した斎藤七段は成績を8勝3敗としました。この結果、永瀬二冠の可能性はなくなりました。その後昇級のライバルたちが次々と敗れていきます。千田七段、深浦九段が黒星を喫し、そして最後に行方九段が倒れて、斎藤七段のA級昇級が決定。規定により、同時に八段昇段となりました。
すでに昇級を決めていた菅井竜也八段とともに、関西所属の若手タイトル経験者二人が今期はA級に昇級することになりました。3月12日に行われる最終局の焦点は、来期順位と残留をめぐる戦いです。谷川浩司九段の降級はすでに決まっているため、枠は残り1つ。可能性があるのは斎藤八段の師匠の畠山鎮八段と、山崎隆之八段で、両者はともに3勝8敗、順位は山崎八段が上です。こちらも両者関西所属のため、奇しくも昇級と降級、どちらも関西棋士が占めることになりました。