第5期叡王戦挑戦者決定三番勝負の第2局。豊島竜王・名人が渡辺明三冠の新工夫を的確に咎める
第5期叡王戦挑戦者決定三番勝負第2局(主催:ドワンゴ)が2月13日に関西将棋会館で行われました。第1局を制した渡辺明三冠が挑戦を決めるのか、それとも豊島将之竜王・名人が踏みとどまるのかが注目された本局は、88手で豊島竜王・名人が快勝しました。
第1局に続いて、戦型は角換わり腰掛け銀に。先手は金の動きで、後手は玉の動きで間合いをはかりながら仕掛けのタイミングを模索します。前例のある進行でしたが、1筋の香をじっと一つ浮いたのが渡辺三冠の新工夫でした。これで未知の局面に突入です。
この手を見た豊島竜王・名人は小考の後に飛車先の歩を交換しました。類型では危険とされている進行ですが、これが渡辺三冠の香上がりを咎める好手順。これで一歩を入手し、さらに遠く香をにらむ位置に自陣角を設置したのが素晴らしい構想でした。
のんびりとしていると、自陣角を主軸に攻められてしまう渡辺三冠は、守りの桂を相手の攻めの桂にぶつけて交換を迫る強攻策に出ます。しかし、これは豊島竜王・名人の待ち受けるところでした。冷静に対処し、自陣角で香を取ることに成功。馬を相手の飛車の近くに作って、「攻め駒を責める」態勢を築いて優位に立ちました。
優勢になった豊島竜王・名人は、渡辺三冠の決死の突撃を冷静に受け止め、攻めを完封。88手で勝利を収めました。
どんな指し手にもメリット・デメリットはあるものです。渡辺三冠の香上がりは金銀の配置を崩さずに待機できる、▲1九飛と寄って端攻めができる、というメリットがあります。しかしその一方で、瞬間香が上ずり隙が生じるというデメリットもありました。本局は、このデメリットを的確に咎め、一気に勝負を決めてしまった豊島竜王・名人の構想力が光った一局と言えるでしょう。
一方、持ち時間を半分も残しての敗戦となった渡辺三冠。持ち時間を投入する場面がないほど一方的になってしまい、不完全燃焼だったに違いありません。
これで両者1勝1敗となり、挑戦権争いの決着は第3局に持ち越しとなりました。永瀬拓矢叡王に挑むのは果たしてどちらになるのか、運命の第3局は2月24日に行われます。