Androidの生みの親として知られるAndy Rubin氏がGoogleを退社してから設立したデバイスメーカーEssentialが事業を停止し、廃業することを発表した。同社は昨年秋に細長いユニークなフォームファクタの新スマートフォンを開発する「Project GEM」を公表していたが、「GEMを顧客に届けるために全力を尽くしてきたが、残念ながら実現の道すじを見出せなかった」としている。

  • Project GEM

    Essentialが開発していた「GEM」、手に持って音声コマンドで操作しやすいデザイン

Rubin氏はAndroidの前にDangerという携帯端末を成功させており (2008年にMicrosoftに売却)、Androidの生みの親として有名になった同氏が再び手がけるハードウェアデバイスは業界の注目を集めた。2017年、Essentialは初のスマートフォン「Essential Phone」(PH-1)を発表した。高質なマテリアルと優れたクラフツマンシップにこだわり、筐体にチタニウムを採用。狭額で表面全体にディスプレイが広がる。シンプルなデザインのスマートフォンだが、マグネットで簡単に着脱できるアクセサリシステムを備える。最初の対応アクセサリとしてEssential Phoneを360度カメラに変える「360 Camera」を用意した。

  • Essential Phone対応のオーディオ・アクセサリ

    「Essential Phone」(PH-1)と「Audio Adapter HD」

ユーザー中心を掲げ「デバイスは個人のもの」という考えから、Essential Phoneには会社や製品のロゴを入れなかった。Androidのアップデートにもすばやく対応。そうした姿勢がユーザーから高く評価された。

しかし、Androidスマートフォンの競争激化で販売は苦戦した。続いてデジタルホーム向けのスマートホームハブを発表。AIアシスタントを絡めてIoTやスマートホーム機器を結ぶプラットフォームに事業を展開し始めたが、その後の事業計画の見直しでスマートフォンに集中。昨年秋にGEMの開発を明らかにした。GEMは従来のAndroidスマートフォンとフォームファクタやUIが大きく異なる。音声やAIを用いた全く新しい操作体験の可能性が噂されたが、残念ながらGEMの全貌を明らかにすることなくEssentialは看板を下ろす。

Essentialによると、2月3日にリリースしたEssential Phone (PH-1)向けのセキュリティアップデートが同社からの最後のアップデートになる。引き続きEssential Phoneを使用できるが、追加のソフトウエアアップデートはなく、顧客サポートも打ち切られる。Essentialは2018年12月にクロスプラットフォームのメールアプリ「Newton Mail」を開発・提供するスタートアップCloudMagicを買収した。現在Newton Mailを使用しているユーザーは、2020年4月30日まで同サービスにアクセスできる。