千田翔太七段が朝日杯将棋オープン戦で藤井聡太七段、永瀬拓矢二冠を破って優勝
第13回朝日杯将棋オープン戦(主催:朝日新聞社)の準決勝・決勝が11日に「有楽町朝日ホール」で行われました。準決勝の千田翔太七段-藤井聡太七段戦は千田七段の勝ち、永瀬拓矢二冠-阿久津主税八段戦は永瀬二冠が勝利し、決勝戦へ。決勝は千田七段が105手で制して、棋戦初優勝となりました。
千田七段-藤井七段戦の戦型は角換わり腰掛け銀になりました。この戦型では研究局面までは猛スピードで飛ばし、中・終盤で残しておいた持ち時間を使ってじっくりと考える、という戦い方がよく見られます。この対局でも、駒がぶつかり始めた局面までは両者ともに早指しで進めていました。
ところが徐々に両者に違いが出てきます。どこまでも研究範囲とばかりに凄まじいスピードで指す千田七段に対し、藤井七段はまとまった時間を使って着手するようになっていきました。藤井七段が40分の持ち時間をすべて使い切った局面での千田七段の消費時間はなんと4分。形勢もすでに千田七段がリードしており、事前準備の精度で千田七段が藤井七段を上回っていたようです。
苦しい形勢になってしまった上に、1分将棋の藤井七段でしたが、さすがの粘りを見せます。敵陣に嫌味を付つつ、自陣に手を入れて簡単には倒れません。しかし時間切迫はやはり厳しかったようで、ついに千田七段の攻めに対する応手を誤ってしまい、115手目を見て投了となりました。
局後、千田七段は「藤井さんに勝ったので、決勝もいい将棋を指したいと思います」。藤井七段は「粘り強く指すことができなかったのは残念ですが、決勝を見て勉強したいと思います」とコメントしました。
もう一方の準決勝、永瀬二冠-阿久津八段戦は相掛かりの戦型に。永瀬二冠は金銀交換に成功すると、手にした金をなんと自陣の受けの最前線である8六に打ち付けました。受けの棋風の永瀬二冠ならではの一手です。この金が防波堤として機能している間に、敵陣の端を突破した永瀬二冠がリードを奪い、一気に寄せ切りました。
これで決勝戦のカードは永瀬二冠対千田七段となりました。どちらが優勝しても朝日杯初優勝です。
振り駒で先手番になった千田七段は再び角換わり腰掛け銀に誘導。ここでも猛スピードで手が進み、50手を過ぎた局面でも双方消費時間1分という展開になりました。桂損の代償に敵陣四段目まで歩を伸ばして、攻めの態勢を築いた千田七段に対し、馬を作って受けに回った永瀬二冠。千田七段が攻め切るのか、永瀬二冠が受け切るのか、両者の棋風通りの進行です。
永瀬二冠は相手の手に乗って、玉を単騎で中段に進出させます。入玉できればほぼ勝ちは決まったも同然ですが、寸前のところで千田七段がそれを食い止めました。永瀬二冠の飛車を捨てる必死の抵抗にも冷静に対応して、105手で千田七段が勝利を収めました。
千田七段は「いろいろな棋戦で準優勝が多かったので、勝ちたいところだった。優勝できてほっとしています」とコメント。第42期棋王戦では挑戦者になるも渡辺明棋王に2勝3敗で惜敗、第65回NHK杯では村山慈明七段に敗れて準優勝と、優勝にあと一歩届いていなかった千田七段。うれしい棋戦初優勝となりました。