前回の「高級マウスは“肉抜き”の軽量タイプがヒット」に引き続き、パソコンショップ アークに1万円以上のキーボードの売れ筋を取材しました。1,000円前後の安価なキーボードもあるなかで、一定以上の金額で人気を集めているモデルには固有の理由があります。そこを、フロアマネージャーの渋谷義寛氏に教えてもらいました。
渋谷氏によると、同店ではゲーミング用やビジネス用途で高級キーボードを買い求めに来る人が多いといいます。「ゲーミング用途では、FPS(一人称視点のシューティングゲーム)に向いたCherry MX シルバー軸を採用したキーボードが人気を集めています。ビジネス用では、静電容量無接点方式のスイッチを採用したREALFORCEが長らく定番ですね」
トレンドと下記の購入のコツ三箇条を踏まえたうえで、2019年下半期から2020年初頭までの売れ筋トップ5を見ていきましょう。
- 最終的な決め手は、実機でのタイピング感。自分の指に聞く感覚で選ぶと失敗しにくい。
- 同種の製品でも配列やキースイッチ、荷重配置の違いなどがある。その差を把握して品定めを。
- テンキーレスに乗り換える際は、数字キーの入力習慣を変える必要が生じることも。
※本文と写真で掲載している価格は、2020年12月17日15:30時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
第1位:10代に異例のヒットを続けるDucky Channel「One 2 Mini RGB」
1位に選ばれたのは、2019年全体を通しても一番売れたという、Ducky Channelのテンキーレスキーボード「One 2 Mini RGB」でした。キースイッチに「Cherry MX RGB 静音赤軸」を採用し、刻印やキーの外周が光る仕様です。税込み価格は1万3499円~1万4366円。
「世界的な人気のプロゲーマーでもあるYouTuberのNINJAさんがこのキーボードを使っていると紹介したことで、ファンの人を中心に爆発的にヒットしています。価格的には安くない額ですが、10代の人にもよく売れていますね。親子で買いに来られるというケースがよくありました」
FPSやTPS(三人称視点のシューティングゲーム)用での人気が高く、なかには動作保証外ながらプレイステーションに使う用途で選ぶ人もいるようです。
第2位:ゲーマー向け定番ブランドの定番キーボード「BlackWidow Elite」
続く2位は、Razerのフルキーボード「BlackWidow Elite」です。日本語配列と英語配列があり、キースイッチも同社開発のグリーン、オレンジ、イエロー軸から選べます。税込み価格はいずれも1万8800円でした。
「キーボードやマウス、ヘッドセットなどの周辺機器全体で見ると、ゲーミング系のブランドでもっとも売れているのは間違いなくRazerです。そのなかでもBlackWidow Eliteはロングセラーで、憧れのゲーミングキーボードとなっていますね。特に20代の方に人気です」
第3位:タイピング重視の人に選ばれる東プレ「REALFORCE」
3位には、東プレの「REALFORCE」がブランド全体としてランクインしました。独自の静電容量無接点方式スイッチを採用したキーボードで、キー全体で押下圧が均一なモデルや、キーの位置によって異なるモデル、ユーザーが調整できるモデルがあります。テンキーつきとテンキーレス、静音と通常タイプ、日本語配列と英語配列、RGB LED搭載非搭載などのバリエーションもあり、税込み価格は1万9602円~3万548円となります。
「仕事で文章やプログラムを書くことが多い人や、ゲームでチャットをたくさんする人に人気がありますね。高価でも良い入力環境を追求したいという人に支持されている感があります。購入層は比較的高めで、30~40代が中心かなと」
第4位:ゲームとビジネスで支持が広がるCorsair「K70 RGB MK.2」
4位は、Corsairの「K70 RGB MK.2」シリーズです。Cherry MX軸を採用したテンキー付きモデルで、税込み価格は1万6887円~2万5300円。
「Corsairは、高級感を気に入って購入する人が多いブランドです。ゲーム用だけでなく、オフィスの机をCorsairで統一したいという方も少なからずいらっしゃいました。そのなかでも多機能でハイランクなK70 RGB MK.2が人気を得ている印象があります」
第5位:英語配列を求める人に根強く支持される「HyperX ALLOY FPS」
5位には、キングストンの「HyperX ALLOY FPS」がランクインしました。Cherry MXスイッチを採用したシリーズで、税込み価格は1万2830円~1万8381円となります。
人気の理由は、英語配列のラインアップが充実しているところにあるそう。「最近は、全体的に英語配列モデルの取り扱いが小さくなっていますが、そのなかでもHyper Xは英語配列モデルがしっかり選べるんですよね。ゲーム向きということでALLOY FPSが安定して売れていますが、チューニングがしっかりしていると評判でリピーターも多いです」
はみ出し情報…2020年に盛り上がりそうなブランド「Varmilo」
売れ筋トップ5に加え、今後注目を集めそうなキーボードをを尋ねたところ、渋谷氏はVarmilo(アミロ)のテンキーレスモデル「Varmilo 68」を挙げました。Cherry MX軸を採用したモデルで、キートップにイラストを配置したり刻印のフォントをバリエーションごとに変えるなどして、見た目の印象も強いシリーズとなります。
「キー配列やサイズ感がOne 2 Mini RGBと似ていることもあって、店頭で気づいて興味津々で触る人が結構いらっしゃいます。デザインだけでなく、チューニングもしっかりしていているので、これからじわじわとファンを増やしていくのではないかなと期待しています」
著者プロフィール
古田雄介
フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)、『ここが知りたい!デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。