スシローが大物を射止めた。政府は1月30日、10月に開催を控えたドバイ国際博覧会(ドバイ万博)の日本館のレストランに回転寿司最大手チェーンの「スシロー」が選ばれたと発表した。
同日、スシローを展開するスシローグローバルホールディングスの水留浩一社長は記者会見に出席。「日本文化を世界に広めるのが使命だ」と意気込み、「日本のスシローそのものを、できるだけ同じかたちで展開したい」と展望を語った。
ドバイ万博から大阪・関西万博につなげたい
水留社長の記者会見は、ドバイ万博の参加機関・独立行政法人「日本貿易振興機構」(ジェトロ)の本部で開かれた。
会見には、2020年ドバイ国際博覧会陳列区域日本政府代表の中村富安氏も同席した。公募には複数の事業者が名乗りを上げたが、応募件数は非公開。中村氏によると、日本の食文化を広げるという公募要件の理念に最も適していたのがスシローグローバルホールディングスだったという。
「どの万博でも日本館は人気のあるパビリオンになっている。ドバイ万博でも多くの人が日本館のレストランに足を運んで、日本の文化を経験してほしい」(中村氏)
その上で中村氏は、「ドバイで最も人気ある日本食は寿司」だと紹介。「ドバイ万博を機に、多くの方に日本食の魅力を知ってもらって、『次は(2025年開催の)大阪・関西万博に行きたい』と思ってもらえるようにしたい」と目標を語った。
「世界の皆様にスシローの味をお届けしたい」
前回のミラノ万博ではフードコート形式を採用し、複数の飲食店が参加したが、今回はスシローが日本館のレストランを一手に担う。
水留社長は「世界各地の皆様にスシローの味をお届けしたい」と話し、メニューはできる限り日本と同じものにしたい、とこだわりを見せる。
「今、日本のスシローでは約150種類のメニューが楽しめる。ドバイでも現地の食品のレギュレーションやハラルの対応をクリアしながら100種類以上のメニュー展開をしたい」(水留社長)
さらに水留社長は、寿司で最も肝心なのは「シャリ」であると主張。「米は全農グループの協力を得て日本のものをドバイへ運び、日本の酢を使い、日本の寿司を再現して、スシローの味を体験してもらおうと考えている」と力を込めた。醤油はハラルに抵触するため、現地調達を検討するという。
レストランの外観は日本館との親和性を重視し、「シンプルだが近代的で洗練されていて、日本を感じられるものにしたい」(水留社長)。木目を使いながら日本らしさを表現しつつ、天井をシャンパンゴールドにするなど、「スタイリッシュ」なビジュアルを計画している。
また、「回転寿司」というフォーマットも、スシローが打ち出したい大きな特徴だ。
「回転寿司は、前回(1970年)の大阪万博で世界に初めてお披露目された。おそらく回転寿司は、今回のドバイ万博で2回目のお披露目になると思うが、昔と比べてシステムは随分と進んだ。ドバイ万博で今の回転寿司をしっかり表現し、願わくば次の大阪・関西万博でも、スシローが皆さんに『未来の回転寿司』というものをお見せしたい」(水留社長)
ドバイ万博をさらなる世界展開の足がかりに
スシローは日本を除くアジア諸国で約30店舗を展開しているが、「将来は北米、欧州、中東にも広めたい」というのが水留社長の考えだ。
「スシローを知らない国々は数多くあるが、万博には『新しいものを見つけたい』という視点を持つ人たちが集まる。そこでスシローを体験してもらい、『自分たちの国にスシローが来てほしい』と思ってほしい。そういう中でビジネスチャンスが生まれるかも知れない」(水留社長)
スシローグローバルホールディングスにとって、ドバイ万博への出店は大阪・関西万博や世界展開の拡大への足掛かりとなる大きなチャンス。スタッフは正社員、アルバイトを問わず社内で公募し、先発組、後発組の2回に分けて派遣する予定で、こちらも経験値を積む上でまたとない機会だ。
価格設定は未定だが、国内同様「できるだけカジュアルな価格帯」を目指す。水留社長は「基本的には赤字のプロジェクトだと思っている。身を切りながら頑張ろうと思っている」と述べ、会見を締めくくった。