経営者JPはこのほど、「エグゼクティブが選ぶ、2020‐2030年で成長する産業のランキング」を明らかにした。同調査は2019年12月3日~27日、管理職以上のエグゼクティブ男女101名を対象にインターネットで実施したもの。
1位の産業は「AI」だった。その理由としては「量子コンピュータ実用化で、開発可能な領域が広がる」「人間からAIやロボティクスへの代用が進む」というものだった。
2位は「ヘルスケア」産業だった。理由としては「健康やQOL向上への欲求が高まる」「高齢化とロボットの進歩によって時間の消費に敏感となり、生活維持や就労のために健康維持が重要になる」などが挙げられた。
3位は「医療」となった。「遺伝子検査やIPS細胞技術の進化によって実用レベルになる」「健康データ収集によるビジネスの拡大が期待される」といったコメントが寄せられている。
そのほか、ロボット、自動車・自動運転、シェアリング、エネルギー、SDGs・ESGなどもキーワードとして挙がっている。
今後の注目産業に自身の事業分野が携わっているか尋ねたところ、57.4%が「事業で携わっていない」、32.7%が「事業で携わっている」と回答した。
今後の注目産業で活躍する経営者や専門家に10年後の未来について尋ねた。JapanTaxiの代表取締役社長・執行役員CEOの川鍋一朗氏によると、モビリティ業界はで10年間で起きる一番大きな変化は、「タクシーやバス、トラックの垣根がなくなり、3つが融合した新しい移動手段が生まれること」だという。
川鍋氏は、自動運転も相当進むが、完全に無人運転にはならないと予測している。スマートドライブ代表取締役の北川 烈氏も、自動運転はそこまで普及しないとしたうえで、コネクティッドが最初に、続いてシェアリングや電気自動車が普及すると考えているという。
ヘルスケア業界の2020~2030年について、シーメンスヘルスケア代表取締役社長の森秀顕氏は、「高齢化がより進み、生産人口が減少するため、費用対効果の高い医療の必要性が増す。個別化医療、精密医療と言われる患者にテーラーメード化した診断や治療の開発、普及が進む」と予測している。
また、遠隔サービスや患者の満足度を上げるための取り組みが活発化すると考えられるという。これらを実現するために、ビッグデータを活用したAIやロボットによる治療、患者の診療情報への自由なアクセスなどデジタル化が進むとみている。
「今後10年でロボットの『コミュニケーション力』が最も変化する」とロボット業界の未来を予測するのは、大阪大学栄誉教授の石黒浩氏。顔や表情、身振り手振りがつき、対話型のロボットとして進化していくとみている。一方で、アンドロイドは今後も一般化はしないと考えられるという。
リテール業界について、カインズ代表取締役社長の高家正行氏は「今後10年の近未来を見通すと、業界としては健全な淘汰があると思います。既に欧米では、業態の中で生き残っているのはトップの1・2社だけ」とコメント。生き残るにはユニークな付加価値が必要として、同社ではデジタル領域に積極的に投資しているという。