豊島将之竜王・名人が佐々木大地五段を破って挑戦者決定三番勝負へ進出。佐々木五段は手順前後に泣く
1月27日に関西将棋会館で第5期叡王戦本戦トーナメント準決勝(主催:ドワンゴ)の豊島将之竜王・名人-佐々木大地五段戦が行われました。勝者が渡辺明三冠との挑戦者決定三番勝負に進出する大一番を制したのは、豊島竜王・名人でした。
振り駒の結果、先手は佐々木五段になり、初手は▲7六歩。▲2六歩から始まる相掛かりを得意とする、佐々木五段としては少し珍しい初手で、9局ぶりの採用でした。豊島竜王・名人は△8四歩と突いて、戦型は矢倉に。両者ほとんど持ち時間を使わずに、すらすらと駒組みが進んでいきます。
速攻を目指す構えをとった後手に対して、先手も銀を繰り出す棒銀で対抗しました。この積極的な対抗策には前例がなく、佐々木五段の周到な準備がうかがえる序盤となりました。
歩以外はなかなか駒がぶつからない、じりじりとした展開を打開していったのは佐々木五段でした。後手から仕掛けてくると思われた地点に歩を突き進め、守りの桂を相手の攻めの桂と交換しにいきます。自陣に大きな傷ができるだけに、決断の仕掛けです。
敵陣にくさびを打ち込んで、佐々木五段が好調に攻めていると思われた矢先に落とし穴が待ち受けていました。一本、歩を突き捨てた手がなんと緩手。陣形が乱れるにも関わらず、その突き捨てを手抜いたのが豊島竜王・名人の好判断でした。ぶつかっていた桂を取ってギアチェンジ。金取りも手抜いて一気に攻め合いに向かいます。
そこからは豊島竜王・名人の強さが際立つ展開になりました。自陣の金取りも、飛車取りも受けずに一直線に敵陣攻略に向かう、まさに肉を切らせて骨を断つ指し回し。最後は自陣で眠っていた角を働かせ、先手玉を即詰みに討ち取りました。
佐々木五段は突き捨ての前にいったん桂を取り、それから歩を突き捨てていれば互角以上の戦いを続けられたようです。一手の手順前後で形勢がガラリと変わってしまう、将棋の難しさ、奥深さが現れた一局でした。
挑戦者決定三番勝負は豊島竜王・名人と渡辺三冠との対決という、ゴールデンカードになりました。また、叡王のタイトル保持者である永瀬拓矢二冠と合わせて、第5期叡王の座を争う3人で全八冠中七冠を有しています。今最も強い3人が揃ったと言っても過言ではないでしょう。
豊島竜王・名人と渡辺三冠はこの1年で7局対戦しており、成績は豊島竜王・名人の4勝3敗。竜王戦決勝トーナメントや、銀河戦決勝などは豊島竜王・名人が制していますが、3敗はすべて第90期棋聖戦で喫したもので、タイトルを渡辺三冠に奪われています。
また、両者は春から始まる第78期名人戦七番勝負を戦うことがすでに決まっています。叡王戦挑決と合わせた大注目の十番勝負、一局も目を離すわけにはいきません。