投資を有効に活用する
ただしそこで、単なる懐古に走ったり、既存の車両をそのまま使ったりするのでは、新たな需要の創出にならない。「鉄道による長距離旅行」に関心を持ってもらうには、現代的な要素も取り入れて、現代の水準に合った快適性を実現する必要がある。その具体的な現れが、以下のアイテムであろう。
- USB電源ポート、車内Wi-FiといったIT関連設備
- 多言語による自動放送と車内案内表示
- 大型荷物置場
- 女性専用車
初期投資とリスクを抑えるのは、単なる節約ではなく、おカネをかけるべきところに回せるということでもある。
そして、「長距離列車」といっても夜行と決めているわけではないから、車内設備は昼夜双方に対応できる内容になっている。無理なく昼行列車としても使える車両なら、活用の幅が広がる。実際、当初は出雲市方面への夜行でスタートするが、2020年10月以降は山陽本線で昼行列車として運行する計画になっている。
しかも、接客設備には多様性を持たせて、個人客、グループ客、家族連れのいずれにも対応できる。個人的に注目したのが、ファミリーキャビンと女性専用車だ。
フルフラットのファミリーキャビンがあれば、自由度の高い過ごし方が可能になる。疲れたり眠くなったりしたら、ゴロ寝してしまえばよい。しかもその際に、周囲への気兼ねは要らない。子供が多少騒いでも問題にならない。
では、女性専用車の何が注目に値するのか。「女性専用車」と称するものはすでにいろいろあるが、それは単に特定のハコ、あるいは区画について「ここには女性しか乗りませんから安心度が高いです」というものである。しかし「WEST EXPRESS銀河」のそれは、話が違う。
例えば、「女性用更衣室」といっている区画があるが、実際にはパウダールームといえる内容だ。なにしろ、スツールと大小の鏡まで用意してあるのだ(!) 着替えだけでなく化粧直しもすることまで視野に入れているのでなければ、こうはならない。
そして、これはすべてのハコに共通することだが、トイレ・洗面所はブラン・ニューである(もとが近郊型電車だから、そうせざるを得なかったのだが)。水回りが古めかしかったり、清潔感を欠いたりすれば、それだけで女性客はソッポを向いてしまう。大事な要素である。
また、普通車指定席のうち2号車の女性専用車は、左右で腰掛の位置がずれた配置になっている。これはもちろん意図的なもので、「隣席に座っている人との視線の交錯」を避けるための配慮だという。ちなみに、女性専用車ではない5号車は、普通に左右の腰掛が同じ位置に並べられている。