斎藤慎太郎七段との関西若手棋士対決を制する。永世名人の谷川浩司九段はB級2組への降級が決定
1月23日に東西の将棋会館で第78期順位戦B級1組(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)の11回戦が行われました。9勝1敗でリーグ成績1位の菅井竜也七段と、7勝2敗で2位の斎藤慎太郎七段との昇級候補同士の対決は菅井七段の勝利。これにより、菅井七段は1対局を残してA級昇級を決め、規定により八段昇段となりました。
菅井七段-斎藤七段戦は、斎藤七段の居飛車に対して、菅井七段が得意の角道を閉じない三間飛車を採用。両者共に穴熊に組み、長い戦いが予感されました。先に動いたのは菅井七段。角道を通したままの駒組みを生かして、中央から先攻します。斎藤七段は5筋で屈服した代償に香得に成功。その香を6筋に打ち付けて徹底防戦の構えをとり、局面が落ち着いたかのように見えました。
しかし、鋭い攻めに定評がある菅井七段。わずか1分の考慮でバッサリと飛車を切り、取った金を敵陣に打ち込みます。これが相手の歩切れを突いた、なかなかにうるさい攻めでした。また、自玉は金銀3枚に守られた鉄壁の穴熊。強引な攻めでもつながりさえすればよく、実戦的には勝ちやすい将棋となりました。
玉を穴熊から引きずり出され、囲いの再構築が困難になった斎藤七段は、穴熊の相手玉に寄せ合いを挑みます。しかし駒をはがすたび、はがすたび金を再び補強され、一向に相手玉が見えてきません。その間にもじわじわと自玉への包囲網が狭まっていきます。結局斎藤七段は王手を一度もかけられぬまま、144手で投了となってしまいました。
勝った菅井七段は10勝1敗の成績で最終戦を戦う前にA級昇級が決定。また、昇段規定の「順位戦A級昇級」を満たしたため、八段となりました。菅井七段は1992年4月生まれの27歳。2017年に第58期王位戦でタイトルを獲得しています。
一方敗れたものの、7勝3敗の斎藤七段は依然2位で昇級圏内。しかし、同成績で行方尚史九段、千田翔太七段が後に続くだけに、これ以上の負けは許されないでしょう。
また、この日降級が決まってしまった棋士もいます。谷川浩司九段は千田七段との対局に敗れ、B級2組への降級が決定してしまいました。谷川九段は1962年4月生まれの57歳。加藤一二三九段に続く2人目の中学生棋士としてデビューし、獲得タイトル数は27期で歴代4位。特に名人は5期獲得しており、永世称号である十七世名人の資格を有しています。また、A級以上には歴代3位の連続32期在籍していました。
今まで永世名人有資格者でB級2組に在籍した棋士はいませんが、谷川九段は局後のインタビューで、よほどのことがなければB級2組で指すつもりと語りました。潔く身を引くのが一つの美学だとすれば、上を目指して戦い続けるのももう一つの美学です。残る最終戦と、来期からB級2組での谷川九段の戦いぶりにこれからも注目です。